ギュスターヴ・モローは、何とも不思議な画家だと思います。
初めて絵を見たのは、十数年ほど前でまだ二十歳だった時、東京八重洲のブリジストン美術館に常設展示されている「化粧」でした。白状しますと、その時は、ルノアールやモネやセザンヌやマチスの絵を見に行ったのですが、モローの絵の、妖しく退廃的な美に悩殺されてしまったのです。
モローは、美術史では殆ど取り上げられず、せいぜい、マチスやルオーの師として言及される程度です。もちろん、十数年前の小生も全く知りませんでした。それにしても、マチスやルオーの師とされながら、画風が全く違うのは何故でしょう? 妖しく退廃的な美といえば、クリムトの絵のほうが類似しているのに。(でも、様式的なクリムトとも違っている。モローと同じ画風の画家が見当たらないんである。)
その後、数年の時を経るうち、ひょんなことから、小生は、モローのアトリエを美術館にしたモロー美術館がパリにあることを知り、行ってしまいました。
それにしても、モローの絵の魅力の秘密とは何なのだろう? 浅学非才の小生は、ただただ疑問を抱える続けることしかできませんでしたが、鹿島先生が本書で解説してくれたおかげで、積年の疑問が晴れました。小生と同じく、モローの絵になぜか魅かれてしまう方には、お勧めの本です。
そういえば・・・蛇足になりますが
モローの絵は、天野喜孝画伯と雰囲気が似ていると思うのは小生だけでしょうか? 天野画伯が、モチーフを神話や文学から採れば、もしかしたら。。。