はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし…。毛並みや顔つきは限りなくリアルに描かれた動物たちが、チェックのスカートやトレンチコート、毛糸の帽子など思い思いの服に身をつつんで次々とやって来る。最後は、大きくなのっそりぐまが「いれてくれ」。てぶくろは今にもはちきれそう。
まだ入る、まだ入る…どんどんふくらむ手袋に、はらはらどきどき。人数が増えるにつれ、ひさしや呼び鈴、かわいい窓などあちこちに工夫がほどこされて、手袋が次第に家らしくなっていく様子を見るのも、楽しい。
最後のページで、雪のなか、何事もなかったかのように静かに横たわる手袋が印象的だ。意外な幕切れが、この物語の魅力をより深いものにしている。(門倉紫麻)