なんといっても、表題作が一番印象的。
地道に仕事をこなし、周りに評価されているのに、心は空っぽ。
からだだけのつながりの男を追い、相手は追いかけてこないのに、情事のときだけ求められるのを、「必要とされている。」と思いたい女。
シングルで働く女性に、ありそうな話ですよね。
麻太郎と源太郎が活躍する「北前船から来た男」、少年たちが一生懸命になって動き回る、微笑ましい一話。こういうのを読むと、東吾たちが年取ったと感じます。一体、嘉助っていくつ?
表題作が一番すきです。
「あたしが死んだら、誰がお盆に呼んでくれるんでしょう」精霊流しを眺めながらそう呟く女の流されるような幸薄い人生が、精霊流しの哀感と照らし合わせて書かれています。それがお互い響き合っていて、不思議で、悲しく、はかなげに描かれています。精霊流しの情緒溢れる描写も好きです。これからの時期にピッタリなのではないでしょうか。
表題作他7篇が収録されています。