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ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 春秋社
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ピアノ練習曲の音楽史 ★★★★★
題名が紛らわしく、ピアノ上達法の本と勘違いしやすいですが、本書は一言で言えば「ピアノ練習曲の音楽史」です。
音楽史に興味がある方だけでなく、ピアノ学習者で、どこまでも続く練習曲の山に辟易している方にも参考になります。自分の受けているレッスンを客観視できます。

「はじめに」の
「ピアノほど筋トレ的な訓練が学習の絶対条件として信じられてる楽器は、他に例がない。」
というくだりは、ピアノと他の楽器を両方やった人なら一度は感じるところです。

ピアノ界では「ピアノを練習することは、練習曲を練習すること」、というのが当たり前のようになっていて、初心者から上級者まで系統立てて山のような練習曲が揃っています。
(バイエル → ツェルニー100 → ブルグミュラー25 → ツェルニー30-40-50 → クラーマー・ビューロー + ハノン といったように)
これは他の楽器ではあまり見られない現象です。

他の楽器はそもそも練習曲の数が少ないし、
(ヴァイオリンやクラシックギターのような、クラシックで比較的メジャーな楽器でも、せいぜい数種類の練習曲しかない。楽器によっては練習曲がない)
他の楽器の練習は「曲」を練習するのが当然のことであり、練習曲はその補助に過ぎないからです。
このあたり、物心ついた頃からピアノ界にいたピアノの先生などには、なかなか気がつきにくいのかもしれません。

そんな奇妙な奇妙な「ピアノ教育業界」はどのように成立したのか、歴史を読み解いていく本で、これまでになかった研究です。
結論から言えば、このような歴史は、この種の「近代見直し」論者の例にもれず、やはり十九世紀ロマン派の産物だった、ということなのですが。
十九世紀は全然ロマンチックな時代ではなかったからこそ、芸術にロマンを求めた(ロマン派)、という、著者の主張を裏付ける、もう一つの音楽史です。

付論の、リストを境にしたピアノ演奏法の決定的な変化については興味深いです。
リストの技法は独自のもので、ツェルニーの技法とは決定的に違っていたことがわかります。
「ツェルニーはリストの師だったのだから大事」という決まり文句には、説得力はありません。

この本でも、やはり先行文献『ピアノの誕生』 はかなり意識されていて、重要な文献です。再発が望まれます。
笑いました、面白い。 ★★★★★
岡田さんは、19世紀に産業革命とともにピアノという楽器が進化するにつれ、弾き方も筋肉強化練習のようなものになっていき、ロマン主義の音楽も「分解・反復・教化」という深層構造に支配されるようになったというスリリングな説を展開しています。私はピアノが弾けませんが、ピアノ教則本の内容には大笑いしました。ピアノを練習した人なら抱腹絶倒ものでしょう。『動物の謝肉祭』の「ピアニスト」の練習曲でもBGMにして、ベートーヴェン以前と以後の音楽のちがいを念頭に置いて読み進めることができます。単なる好き嫌いを止揚して、楽曲や演奏を歴史的に見る方法を学ぶことができます。