新しい出会いとなる本
★★★★★
これまで、まったく知らなかったクルドのこと。
この1冊でだいぶ近づける気が…する。
もちろんそれは、
錯覚でしかないのだが、
この1冊に書かれていることは、
ほとんど世界が知らないこと。
知らされていないこと。
いや、知ってて、黙認されていることだ。
クルド人は、
国を持たない世界最大の民族である。
元々その地に住んでいたというだけで、
勝手に国境が引かれ、
国ができてしまった。
トルコ、イラン、イラク、シリアにまたがる、
クルド人の住む地、クルディスタン。
作者としてはトルコ編に続く2冊目のイラン編。
トルコに比べ、
一見容認されているイランでも、
やはり差別の根は深い。
イランの中でもクルド人は少数派であり、
さらにまた、シーア派による国の統制は、
スンニ派である彼らはさらにマイノリティーである。
望んでそうなったわけでも、
何かの落ち度があってそうなったわけでもない。
ただ、そこにいただけだ。
分断され、
迫害され、
締め付けられている。
著者は、
あるきっかけで、トルコでクルド人に出会い、
それから彼らを追い続けている。
カメラを向ける彼らが言うのは、
「どうか私たちのことを、
日本の人たちに、
世界に人たちに知らせてください」
ということ。
世界のだれも、
彼らを助けようと、
彼らの事を知ろうとはしない。
差別は当然のごとく貧困となり、
そこから抜け出すことはできない。
知らないことを知る。
きっとそこからすべては始まる。
この本との出会いは、
そんな予感がした。
著者の目線は、
いつでも彼らの側にある。
子どもたちも、大人たちも、
カメラの前では屈託なく、
そしてまた、
彼らの住むその地も、
美しく、あたたかい。
新しい出会いのある本でした。