この時代、漢民族は、北方異民族(五胡)に黄河流域を追われて江南地方に逃げ込み、約200年の間に、6つの小型王朝を興亡させた(よって、「六朝時代」とも呼ばれる)。マッチョな北方への反発からか、南朝の国家は貴族趣味に走り、上流階級の男達は、驚くと気絶するくらい ひ弱な方がクールとされたと言う。馬車に乗るにも、お供の人達に抱っこしてもらったというダメダメぶりである。
情けないと言えば、限りなく情けないが、儚げなものを美しいと見る感覚は、なんとなく日本人的な気もする。また、こんな風潮の中にあって、芸術・文化は成熟し、陶淵明、王義之のような、後世に決定的な影響を与える天才も出現している。
一方、北朝の国家の気風も次第に洗練されていき、「他民族との融和」という理想主義を掲げ、天下統一目前まで行きながら、尊重していた筈の他民族出身の将軍に裏切られて自滅し、失意の最期を迎える、苻堅のような人物も登場する。この時代の君主は、名君・暗君ともに、どこか、現代人的な脆さを感じさせる人が多い。
また、数世紀後の地方小王朝である南唐(このシリーズの第6巻に登場)も、軍事的にはボロボロながら、文化的・経済的には繁栄し、芸術面で不滅の影響をのこしたと言う。「国が栄える」とはどういうことか考えさせられる。
すっきりしていると思います。