副題がマイナス1で4点
★★★★☆
著者が様々な雑誌等に記した短編を集めて1991(平成3)年に小沢昭一さんが主宰する“新しい芸能研究室”から発行された単行本が底本。古本屋で購入した底本で最初に読んだ際に、「文庫化してもっと安価で一般書店で買えればいいのに・・・・・・」と思ったものだ。その意味では復刊自体は非常に喜ばしい。特にタイトルになった『志ん生の右手』は佳作である。ただし、副題の『落語は物語を捨てられるか』は、最初の章の題なのだが、あまりにも短い「雑感」とでも言うべき文章である。複数の噺家に同じ演目をやらせてみたい、という発想などおもしろくもあり、噺家と落語というテーマ自体も悪くないが、全部で三十近いエッセイが必ずしもこの副題に沿って書かれたものではない。そもそも二十年近く前に書かれたものから底本発行近くのものまで幅広く収録された随筆集なのだ。よって、この副題は誤解を招くし、大仰すぎるので減点対象。