前書きから第2章までは出色の出来
★★★★☆
社会思想家というものはこういう目で世の中の政治論争をみているのか,と感心しました.
第1章と2章は日本とドイツの戦争に対する反省の取り組みについて,大まかな流れを過去の歴史や根底にある民族的な思想もからめつつ代表的な論者を挙げながら解説しており大変面白かった.
しかし,2章の終わりから3章4章は正直論点がよくわからない.ああいう人がいればこういう流れもあった式の書き方である.それが思想の流れと言われればそれまでだが・・・ .
思想が現代社会に重大な影響を及ぼしたメカニズム,例えば日教組が国の根本である教育・日本人としての良識を如何にダメにしたかというような重要な事項には触れられてない.日本における戦争の反省と今後の展望について,著者としての主張が盛り込まれていないのが残念です.
もっとも衆愚政治で某国からの思想操作もお構いなし,ようやく破綻が明瞭になってきた現代日本の政治思想(と呼べるレベルのものはないと思うが)に疑問を抱いていないというなら話は別ですが.
これほどの学識があるなら批判を恐れず,現代の日本社会の問題点の明確化と改善に建設的に関わって欲しい.
帯の字あまり関係ねー!
★★★★★
内容に関しては解り易いが、それを今度は己れの口でもって説明せよと言われりゃあどうするよ?
出来ないよ。
そもそも明治以来の「思想」なんてものは全て外からの借り物であって、我が国思想なんざそうした西洋の真似や鸚鵡返しに過ぎないのだし、我が国で思想を語るものならば、直ぐ様空虚となってしまう。
そう、この本では我が国のニセモノ思想の無惨さを著した良書とも言えます。
しかし最近は新書と銘打ってもこのような難しい内容で綴られた物(本書は至って平易だが)もあれば、己れのエッセイをさも論文めいた偏見まみれみたいな本もあり、出版業界も学者さんも幾ら大壮なこと言っても「腹が減っては戦は出来ぬ」のですなあ。
思想が現実(世間に媚ること)に屈服するから、我が国では思想なんぞ流行らない。
予備知識なしに読むのはキツイけど‥。
★★★★☆
多くの良書がそうであるように、反復して読む事で真価が読み手なりに理解できる本。読み手の当該領域への気迫と予備知識がある程度は求められる。
立ち読みで済ますには内容が高密度で多大。
再読するかどうかは読み手の当該領域への興味と気迫次第。私は不明。
新書なので書棚の華にはなかなかならないが、新書コレクターには良い一冊。
他書で代替できるかどうかは、私には不明。
わかりやすい
★★★☆☆
日本とドイツの戦後史。マルクス主義や戦争責任のとらえかた、ポストモダンの状況など、とてもわかりやすくかかれていて便利な本だとおもう。西洋思想が体系的受容がなされ「経験」されなかったので、常に現実との乖離をおこす日本、他方現実にしっかりと根付いたドイツ、というのが著者の主張。
そう、著者自身もおっしゃっているように、本書は、丸山真男が言っていることをわかりやすく焼きなおしている。でもわかりやすいので、それもいいだろう。でももうすこし著者自身のオリジナルな意見を打ち出してもいいのではないか、、、、でもそうするといつものように「攻撃」になっちゃうか。
一般人向けの入門書とは言いにくい
★★☆☆☆
本に書かれている内容の多くが、著者が論点としているはずの「過去の清算」と関係が薄い内容であり、しかも戦後の日本の左翼思想をポートピア的なものと皮肉っているように見受けられる。よって、右派的な立場から読んでも、左派思想に哀れみを感じさせるところが少なくない。
ただ、思想史上の流れや出来事などが淡々と書かれていることもあり、背景をあまり知らない人がその内容を追うのは疲れる。もう少し、思想史の概要を入れてもらったりや、専門用語を簡易な言葉に置き換えて欲しかった。また、このようなタイトルにし、かつ戦争責任を言及しているはずなのに、単なる思想史を述べたもののように感じられるのは、大衆的な思想、つまり世論を、学問的にではなく感情も交えた生々しいものとして取り扱うという点が抜けているせいであろう。