脳が熱中症気味になる
★★★★★
最初に読み始めたときから 体のまわりを小説のなかの空気がとりまいた様に ぐっと引き込まれる感じがした。
夏の暑い日にすこし熱中症気味で住宅街の小道を歩きながら 水分を欲している状態で 人の話を効いているような 良い意味で かなりうやむやな作品だった。 夏の作品なので夏に読むのはおススメ、そして物語全体が 読み手に 気温や湿度を伝えるので すこし熱中症気味にぐらりとした印象を与えてくれる作品。私の中で優れた小説というのは、空気や感情を読み始めたときからダイレクトに脳が受け取れる作品。この小説はまさにそれだった気がする。「黒と茶」もそういう意味ですごく良かった。屋久島を体全体で脳で味わうような楽しさだった。
ただ話全体がやはり暗い話題なのと、ぐっとこらえるような忍耐力が必要な話で、しかも読み始めて途中では最後まできっとこの謎はのこされたままになると思うほど爽快感は無かった。 でも読み終わっても心に残る作品で、終わらないからこそ 歩いているときにふと思い出したり小説の空気を体にまだかんじていたり、小説とはあまりない空気の 一体感を楽しめる点が良いと思う。
たしかに読み手に苦痛を強いる部分もあるかもしれないけれど作者もそれはおなじだったのではと思う。
誰が主役で 誰のことを語り手が話していて どこにつながるのかが全く読めずに 一回読むだけではあれ?あれ?という間に暑さの中で頭がぼーっとしてて読み終わったのに気づかなかったのかな? というかんじ。
一回全部読み終わってからもう一度読むといろいろな物がつながって納得する気がする。日常にふと読むのにお勧めです。
「誰が真実を話したの?」
★★★★☆
オビ通りですね。評価が分かれるのも、「文学」をどう捉えるかも、この一言に尽きます。
1.結末を楽しむもの。
2.過程を楽しむもの。
簡単に言ってしまえば、文学にはこの二種類+二つの融合系が存在するのだと、私個人は考えています。そしてこの本は、間違いなく「2.」のタイプです。
作者の描写の的確さ、美しさ、そしてそこから立ちこめる、ひんやりとしているのに、どこか粘ついた汗を想像させる幻想空間、K市。この雰囲気作りのうまさは、やはり恩田先生の凄まじい部分だと思います。
しっかりした結末を求めるのは、読者だけではなく、世の中全体の傾向のようです。しかし、本当の「答え」を知っている、作り出すのは、いつだって自分自身じゃないでしょうか?
受け止めるだけではない。投げかけられた疑問に応える、それも、一つの読者の形だと思います。
秀逸
★★★★★
レヴューをみればわかるように、たしかにミステリーとしてよめば、いまいちかもしれない。
純粋な推理や論理パズルを楽しみたいのであれば、それこそエラリイ・クイーンでも読んだ方がいい
自分の場合は、本屋で表紙デザインと題名にひかれて手に取った(筆者すら見ず)
この本は、ミステリーという一般化されたカテゴリーに対するアンチテーゼとさえ位置づけうるのかもしれない
特筆すべきは語り方です
様々に語りの対象をかえ、心理を明らかにし、真実へ至ろうとする
ある評論でこんな主張がありました
「文学者は既存の象徴性を忌避することに骨を折る。徹底的に言葉から象徴性を排除するか、あるいは言葉を過剰気味につかって象徴性が無意味に接するところまで膨張させる。しかし、象徴性といのは言葉に生命、本質であるので、その通俗性を嫌い象徴性を忌避する営みは、根本的背理を生む。象徴性なしには文学は成立しえないから。結局象徴性に立ち戻らざるをえないのかと嫌悪や苦悩、自己否定にいたる。そこで発奮してまた、象徴性を忌避する。こうした反復した悲壮な努力によって、かろうじて真実に近いものを語りえる」
(記憶の中のものなので、自説半分、要約半分かと)
この小説はこの文学のあり方を地でいくものではないか、と思うのです。
具体的な内容に関しては、すでに有用なレヴューがあるのでそちらを参照してください◎
残念だけど不満が残った
★★☆☆☆
結構本気でトリックや動機、
真犯人などを推理していただけに
「そりゃあ、ないよ〜」って思ってしまった
緋沙子の描写が足りなすぎて
全然人間味もないし、
怖くもない。
強烈な個性も、不気味さも
嫌悪感も湧かない。
ただ盲目の美少女だというだけでは
引き込まれないなあ・・・
大量毒殺事件なのに
動機が皆目分からないのも
どうかな?と思った
途中までは面白かっただけに残念。
怒濤のクライマックスか
または不気味な余韻が欲しかったです(笑)
ユージニアって?
★☆☆☆☆
本屋にて。
名家で発生した大量毒殺事件。(良い設定だ)
数十年を経て解き明かされる謎(まさにミステリーですな?)
見落とされていた真実を証言する関係者たち(本格派の雰囲気がする)
日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー(これは買うしかないだろう)
読みながら。
ぜんぜん謎解きが始まらない。(あれれ。おかしいぞ!?)
だんだん読むのが苦痛になった。(これから面白くなるのかな?)
トリックは?密室は?(期待した自分が悪かった)
最後まで読んだ後には空しさだけが残りました。毒殺事件なのにキレイに小ぢんまりとまとめてしまった感じがした。個人的には毒殺事件なら、もっとドロドロした怨恨の路線で行って欲しかったと思う。
ユージニア。途中で言葉もネタバレしたし、言葉自体にも共感できなかった。
タイトルにするほどの言葉じゃないと思った。