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残虐記

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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「小説」をもてあそぶ「小説家」 ★☆☆☆☆
芥川賞作家の、保坂和志の著書にも記載してあるのだが、「小説家だからといって小説を自分に都合良く使ってはならない」(記憶で書いているので語句は違うと思う)ということを、やっているのが、この桐野夏生だと思う。

著者の「東京島」もそうだが、同じシチュエーションで描いた小説ならば、石原慎太郎の「秘祭」が際だって良くできている。

小説家は、小説を「都合良く」使ってはならないと思う。

これは、制作する人間に共通の暗黙の了解であると思う。画家も作曲家も。

このような書き方をしている限り、もうこの著者の進む「小説」は開かれたものにはならないはずだ。
もやもや ★★★☆☆
 桐野氏だから相応のレベルは維持していますが、内容の面白さのわりに、もやもやが残ります。ケンジへの気持ちは、もう少し書き込んでいただきかった。主人公の結婚相手にしても、もう少し驚かせて欲しかったと思います。読みはじめには、大きなどんでん返しを期待していました。それがなかったのが残念です。
とめどなく流れ出る高密度の創作空間 なのですが. ★★☆☆☆
気になっていた桐野夏生の最初のチョイス本としては、快心作じゃないものを手に取ってしまったのかもしれない.

"残虐"とのタイトルから想像したままに、
一種甘美なエロスで物語を進める筆致、、というか、
・・主人公を苦しめた世間の想像力が読む側と同質というニヤリも楽しめたが、
総じて後に何も残らなかったのが予想外だった.
聴いている間はとめどなく再生される密度の濃い想像に圧倒されるが、
終わると消えて何も残らぬようにできた音楽のようだ.

その過程をダイレクトに楽しむことがこの作の本質なのかもしれないけど、
ならさらに「単なるヨミモノ」の域の中にあると感じた.
そのように楽しむべき作なのかもしれないけれど.

なお筆致と書いたのですが、
年齢的には"子ども"の少女の言葉づかいや語彙のセレクトに馴染めなくて、
そのリアル感のなさが手応えのなさというか、それでいまひとつ没頭できなかったのかもしれない.
けれど、それがこの人らしい強い創造の世界を生みだす独特のテクスチャーかも、と予想する.
残念ながら ★☆☆☆☆
これが全くの創作であったのなら、星5つどころか7つでも8つでもつけたいところ。

しかし、どれほど作者が「偶然の類似性」を強調しようとも、あきらかに特定の事件をモチーフとしているのは確かであり、読んでいて不快さがこみ上げるのを抑えようがない。「読ませる」作家なのだが、この作品は「読まされたくない」。

ノンフィクションやドキュメンタリーなら、それはそれでいい。その場合は不十分ながらも事実があり、関係者との間には信頼や、あるいは契約がかわされる。しかし題材だけいただいて、作者の勝手な「想像」で書いた内容としては安易に過ぎる。作者の緻密な文章力や表現力でもって、それをやられるのだから当時の被害者やその家族にとってはたまったものじゃないだろう。「グロテスク」に続き、これもある種の「セカンドレイプ」ともいえる。作家として以前に、人間性が問われる作品。「枯渇してしまった」のは作者自身なのだろうか?「Out」の鮮烈さと力強さはどこへいってしまったのだろうか。

本当は星ゼロにしたいけれどゼロ評価ができないのと、(万にひとつもないとは思うが)「想像する悪意の他者」を作者本人が現実世界で演じている可能性もあるとして、星ひとつ。作者には「言霊」というものを、もう一度真摯に考えてもらいたい。
夫婦関係とは監禁である ★★★★★
桐野夏生はこれまでも「OUT」、「グロテスク」、「リアルワールド」など様々な実際にあった事件に発想をえた作品を書いてきた。今回の残虐記も、言うまでもなく7年前に起きた「新潟少女監禁事件」をモデルにしている。

良識的に言えばこうした手法に対し被害者の感情を考えろ、といった批判も成立するのだろうが、桐野夏生の場合、事件自体は作品発想の原点に過ぎない。徹底した「現実」の換骨奪胎により、その虚構世界は全く違うものになっている。しかも「現実」以上にリアルなある種の「現実」を構築することに常に成功するのだ。

今回も犯人のケンジ、主人公の少女と言うキャラクターに、隣部屋から二人を覗いていたと見られるヤタベと言う中年男を作り出すことで、「男のSEX」の不条理性をこれでもかというほどに抉り出している。長く女という「性」にこだわってきた作者にすれば、初めて本格的に「男」と言うテーマに取り組んだ作品と言えるのではないか。

そして。

エンディングを読んで、ああ、この小説は桐野夏生にとっての「私小説」だったのだな、と気づかされる。
宮坂検事が「夫」であったと言うオチ。
それは監禁されていたという過去をもつという意味でなく、結婚生活における夫婦と言うことを描きたかったのだと言うことに気づかされるからである。ある意味で結婚生活というものも、女性にとっては監禁に近い「残虐記」になりうると言う暗喩が感じられる結末だ。