「トゥ・オブ・アス」(法月綸太郎)――学生時代の習作を改題
★★★★☆
◆「トゥ・オブ・アス」(法月綸太郎)
『二の悲劇』の原型となったデモ・バージョン。
短篇であるため、トリックの仕組みは長篇版よりもクリアでわかりやすいですが、
二人称叙述の挿入という作品の主題と連関した趣向がなく、人物の掘り下げも
浅いため、物語としては、どうしても奥行きや深みに乏しいものとなっています。
ちなみに、タイトルの「トゥ・オブ・アス」は、『ふたたび赤い悪夢』、
『二の悲劇』の作中に出てくる映画の題名であり、作者にとっては、
二人の従兄弟の合作者エラリー・クイーンを含意する言葉だそうです。
◆『しらみつぶしの時計』
確かに不条理
★★★☆☆
1996-98年に『小説non』に掲載された短編ミステリ10篇を集めたもの。執筆しているのは有栖川有栖、恩田陸、加納朋子、倉知淳、近藤史恵、柴田よしき、西澤保彦、法月綸太郎、若竹七海。
出来映えはさまざま。面白かったのは法月「トゥ・オブ・アス」。学生時代の作品で、のちの『二の悲劇』の原型となったもの。ひどいのは有栖川「暗号を撒く男」。
全体として不条理な事件が多く、虚しい。
ばらつきがあるが、、、
★★★★☆
アンソロジーであるが、各作品のレベルにばらつきがあると感じた。
法月綸太郎の作品は、自作品の某長篇の元ネタになったものであるが
短編の方がすっきりしていて面白かった。