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柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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ミステリー風味 ★★★★☆
桐野さんは心理描写のうまさがやっぱり際立っています。
陰鬱な雰囲気の作品なので、雨の日の薄暗い部屋で読みたいですね。

ただあらすじにもあるように「娘が謎の失踪を遂げる」なんて
書いてあるものですから、「いかに鮮やかにその謎を解くのか?」
ということは誰しも期待するところなのではないでしょうか。
しかし本作ではその謎に対する明確な解答はありません。つまり、
謎の提示があり最後にタネ明かしがある、というミステリー作品だと
期待して読むと最後に肩透かしをくらったような気分になってしまいます。
(その「肩透かし感」が著者の狙いなのかもしれませんが・・・)
いち読者としては冒頭になんらかの形で、「この作品はミステリーでは
ありません」とはっきり伝えてほしかったところです。

しかしこの不満を鑑みても、桐野さんの後の傑作「グロテスク」に通じる、
人間の心を深くエグる名作であることに変わりはありません。
ちょっとネガティブな気分に浸りたい方におすすめしたい一冊です。
すごい・・・・ ★★★★★
これはすごい。
圧倒的な構成力。読ませる読ませる。

浮気がもとに始まった大事件。濃密な恋愛関係もさることながら、
登場人物が織り成す幾通りもの推理、人間描写。

本当にいい本に出会うと、読む手が止まらなくなり、読み終わる
とそこにジッとしていられなくて、ウロチョロしてしまう。
まさにそうなった。すごい・・。取るべくして取った直木賞。
でも、逆に直木賞で良かったの?とすら思わせられる。
跡形もなく消えた少女の謎 ★★★★★
子供の失踪によって翻弄される大人たちの人間模様が読み応えあります。
人間の弱さと力強さが交差しながらも人間社会の脆さまでも浮き上がっていてドラマ性があって面白い。
本作にあるものとないもの。それが生み出すもの。 ★★★★☆
第121回直木賞受賞作。

本作にあるものは「語り手の移ろい」「過去と現在の錯綜」「ゆめとうつつの混濁」
本作にないものは「まとな人間性の持ち主」「カタルシス」

そんな本を読まされた側、つまり我々は、
自我が移ろい、昔を回顧し現在を嘆き、居場所のなさを思い知り。
自分の人間性を疑い、精神的浄化とは真逆の何処かへおいてきぼりにされる。

最後に論理的解決があるようなミステリー好きの方にはお勧めできませんが、
人間の心の闇(あるいは淵)を覗いてみる、そんな心理モノが好きな方はぜひ。
アンフェアだが腹は立たない稀有な異色作 ★★★☆☆
直木賞受賞作だが、大衆小説と言うよりは、純文学寄りか?
密室殺人事件もののミステリと思わせて、
解決編は無いw
ホラーみたいな幻視で真相を突きとめたと思わせるが、
謎の憑依(殺された少女の霊?等)現象は複数あり、
どれが真相かは明示されない。
少女失踪事件で人生が狂った人々の悲劇の記録である。
落ちや救いの無い結末だが、
文章は巧くてページダウナーなので、
あんまり腹は立ちません。
全てがジャンル破壊の異色作みたいなので、
桐野夏生はもう少し読んでみます。