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わが父ショスタコーヴィチ―初めて語られる大作曲家の素顔

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 音楽之友社
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感動の回想--良き父であった大作曲家 ★★★★★
 読み終えて、感動を禁じる事が出来無かった。--20世紀を代表するロシアの作曲家ショスタコーヴィチ(1906-1975)の知られざる人柄を、彼の子供たちが回想した本である。幾つもの宝の様な逸話が語られて居るが、その一つに、1946年の夏、ショスタコーヴィチ一家が滞在して居た別荘の近くに、ドイツ人捕虜が現れた時のこの逸話が有る。この逸話は、特に感動的である。--「・・・一九四六年夏のカマローヴァの思い出です。その頃、プリモルスキ街道が建設中で、その仕事にドイツ人捕虜が駆り出されていたのです。その中の捕虜のひとりが僕たちの別荘の近くへ時々やってきて、とてもきまり悪そうに施しを受けていました。そんなある日、僕がベンチに座っている例の捕虜をながめていると、父がやってきました。父は僕の頭をなでて、静かな口調で言いました。『怖がっちゃいけないよ。あの人は、戦争の犠牲者なんだ。戦争というのは、何百万人もの不幸な人を生む。別に悪いことをしたわけではないんだ。あの人は軍隊にとられ、戦うために地獄のような対ロシア戦線に送られ、今度はここに運ばれてきた。それで生き残って捕虜になったんだ。故郷のドイツには、彼の奥さんが待っていて、たぶんお前やガーリャのような子どもがいるに違いないよ。』」(本書42‾43ページより)--子供たちが小さかった頃の或る夏、別荘の近くに居たドイツ人捕虜の姿を見たショスタコーヴィチは、自分の子供にこう語ったと言ふ。何と言ふ優しい人だったのだろうか。そして、何と言ふ素晴らしい父親だったのだろうか。本書を音楽に関心の有る人のみならず、現代史に関心の有る全ての人々に推薦する。

(西岡昌紀・内科医/ショスタコーヴィチ没後30年目の日に)
苦悩する天才の実像 ★★★★★
ドミトリ・ショスタコーヴィチの娘・息子の、父に関する回想を中心として、知人・友人の著作などからの引用で補足しながら編集した書物である。訳はとても明快で、翻訳の中心となったロシア児童文学の研究会「カスチョールの会」の実力の程が実感できる。実にすばらしい翻訳である。

本書は緊密に構成された著作ではなく、いわば炉辺の思い出語りのような、とりとめのない閑談集の趣をもつ。しかし、語られる事実は多くが重い内容である。栄光に包まれているかにみえて実は凄惨だったとも言えるショスタコーヴィチの生涯が肉親の立場から語られ、大変に迫真性がある。そかしその一方で、彼の家庭人としての微笑ましい挙動も描かれていて、多少は心が和むのである。彼の音楽に触れ、感動したことのある人に推薦したい。

なお、彼の病気が筋萎縮性側索硬化症(ALS)であったとする定説(本書でもそうなっている)については、どうやら幾分の保留が必要である。発症が1958年、死亡は1975年であるが直接の死因は肺癌であり(彼はheavy smokerであった)、筋力低下と筋萎縮とは死の直前にも歩行不能になるほどではなかったこと、左上肢は比較的保たれていたことを考えると、あまりに罹患範囲が不均等であり、かつ進行が遅く、典型的なALSではない。ALSとしてもflail arm syndromeであったのか、それとも孤発性の脊髄性筋萎縮症か、あるいは多巣性運動ニューロパチーであったのか?「足が痛い」という訴えがあったことを考えると、頸髄疾患(後縦靱帯骨化症やヘルニアなどによる神経根障害および脊髄障害)であった可能性も否定できない。病跡学的にも興味深い書物である。

良質の証言集 ★★★★☆
例の有名なヴォルコフの「証言」はやや偽書っぽくて好きになれなかったが、この本は娘と息子から見た良質の証言集となっている。なによりここに挿入された多くの写真がショスタコーヴィチのおかれた立場と苦悩を見事に表現しているように思える。かれの交響曲や弦楽四重奏曲が20世紀を代表するドキュメントであることを再認識した。