珠玉の言葉の数々が、作品を織りなす
★★★★★
PL学園甲子園出場経験をし、
一線のプロ野球選手となったアスリートのコメントが
中心とはいえ、橋本さん文章力があります。自身のピッチング同様、
ストレートで、非常にわかりやすく、読みやすく、心に響く言葉の数々でした。
〈 勝負者でなく、教育者でありたい 〉
中村元PL学園監督の、この言葉が胸に残りました。
〈 野球人たる前に、社会人であれ 〉
野村楽天現監督も、このような言葉を残されていますが、
ここに、PL学園の強さの真髄が隠されている気がしてなりません。
先輩への礼節、すべてのものへ感謝する気持ち。
近年は、いじめ問題発覚以降、
低迷しておりますが、80年代の強豪PLの復活を信じています。
華々しかった80年代高校野球のインサイドストーリー
★★★★☆
PL出身の選手はプロで成功する、という有名な定説がテーマになっているものの、残念ながら、その答は見出せなかった。答を求めようとしてはいたが、思い出話が中心になってしまっている。
また、プロ野球選手の書く本なので、内容が薄くなりがちなところである。しかし、80年代を知る高校野球のコアなファンにとっては楽しめるだろう。それには橋本の視点というのが重要な気がする。登場する名選手の半数以上と同じ釜の飯を食べてきたということや、高校・プロでの橋本の境遇が効いていて、読み応えを生んでいる。世代が偏っているので、同じ話が何度も登場したりして、本としての手際は決してよくないが、その話の重大さや共有感が伝わってきて悪くない。
一方、標題に対する答を見出すには、橋本の知っているPLは強すぎた。橋本自身もそうだが、世代のスターが集まり、甲子園で活躍してプロに進んでいくのがPLだった。しかし、PLは橋本の世代以降、衰退している。中村PLの晩年は甲子園での成績も芳しくなく、チームの質も変わってきた。その後、中村が退き、一時の荒廃を経ながらも、何名かのPLらしい選手を輩出している。それを可能にしたのは何だったのか? 標題から望まれる答はこれをクリアしたものになるのだろうが、その部分は謎のままである。
25学年も続けてプロ野球選手を輩出するって、普通あり得んよね
★★★★★
まずはよくぞここまで頭数を揃えましたなぁ。第1章から、桑田真澄、宮本慎也、立浪和義、清原和博、木戸克彦、金石昭人、吉村禎章、片岡篤史、野村弘樹、中村順司監督、前田健太と、1章ひとりずつの肉声がドワーッと続くわけです。著者・橋本清を加えると、12編のPL学園論がビッチリ詰まっております。
勝利に至るエピソードはそれぞれに光を放ちつつ、読み進むにつれタイトルでもあるテーマ、「PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?」が徐々に理解できる。それが今の世の中ではほぼ全否定されている、根性論的なものであったり、奴隷制とも言える先輩後輩の主従関係と無関係ではないというから不思議なものだけれども。
12人のほとんどが異口同音に「高校1年生の時だけには、1億円もらっても戻りたくない」と言う。それでも「あの1年生の苦しい時間があったから今がある」とも口を揃える。目配りや気配り、我慢という今風でないキーワードを、有無を言わせず徹底的に叩き込む学校は、25学年(!)も途絶えることなくプロに人材を送り込んでいる。25学年である。四半世紀だ。まだ伸びる可能性だってある。多い学年は、5人である。2000本安打するような選手も、200勝するような選手も、ちょいちょい出てくるのである。ありえへん。でも、事実なのだ。
そんなありえへんはずの事実に、なんとなく得心がいってしまう。「PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?」。確かに、読むとその理由が分かる気がしました。