「風鈴の女」は特に心に染みる作品でした。妻に先立たれた親友辰吉のために、自分の妻に身の回りの世話をさせた松倉。やがて辰吉が年の離れた後妻を迎えたとき、降りかかる家族のゆがみ。松倉の妻、辰吉が亡くなったあと明らかになる真実に、読み手は予想していたことがやはり事実だったのかと納得しつつ、なにか、中年男女の弱さ、寂しさを知ります。40代以降の年代の方なら琴線に触れるものがあるに違いないです。
男性が主人公になっているものばかりなので、女性には少しかけ離れた思考もありますが、人間、生きている限り異性を求めているんだなぁと思わせる作品集です。