面白い短編から先に収録されている
★★★★★
中華ファンタジーの伝道師・田中芳樹による、中国を舞台にした短編集。
個人的に田中氏の中国関連の全著作の中でも3指に入る名作で、
『黒竜の城』 『天山の舞姫』 『長安妖月記』 『白日、斜めなり』 『長江落日賦』 の
5つの物語が収録されている。
加えてあとがきには三国志ブームによる虚偽の歴史観の蔓延に対するアンチテーゼとして、
赤壁の戦いの真実に関する考察や、善悪を明確に描いたように思われる羅貫中が裏に仕掛けた罠の示唆、
またマリーアントワネットの迷言やシンデレラ等、海外の逸話のルーツが実は中国にあった事など、
様々なエッセイが収録されており面白い。
浩瀚なる資料を元にした考察、格調高く重厚な文体、興趣深く精緻なる自然描写、活き活きと描かれた群雄、凄絶な剣戟──
作家デビュー間もない頃の作品集ゆえやや生硬ではあるが、
田中氏の作家としてのエッセンスが凝縮された魅力的な一冊。
活字の魔力に酔い痴れよ
★★★★★
中華ファンタジーの伝道師・田中芳樹による、中国を舞台にした短編集。
個人的に田中氏の中国関連の全著作の中でも3指に入る名作で、
全部で5つの物語が収録されている。
第1話 『黒竜の城』
明の永楽帝の命を受け、東北辺境の地を督撫すべく派遣された亦失哈。
凍結した黒竜江を越えた彼は未知の城を見出し、そこに住まう不老不死の妖女に遭遇するが…。
第2話 『天山の舞姫』
唐の玄宗皇帝の御世、サラセン帝国の動向を探るべく派遣された李炎は、
故郷長安を遠く離れたフェルガナの地で、超常の力を持つ妖艶な舞姫・ゼノビアと運命の邂逅を果たす。
第3話 『長安妖月記』
唐代初期、老境にあって人格が一変し、未曾有の侵略戦争を企むようになった皇帝李世民。
兵部尚書・李靖は、皇帝の豹変の裏に予言に示された方師の暗躍がある事を知り、二人の武将を召集する。
第4話 『白日、斜めなり』
三国時代中期、魏より蜀に亡命し客将として迎えられた夏侯覇の、数奇な後半生を描く。
異なる視点から三国志演義を分析し、その虚実を浮き彫りにした作品。
第5話 『長江落日賦』
南北朝時代後期、一族を煮殺され魏より梁に亡命した侯景は、叛乱により武帝を殺害し皇位を簒奪する。
いまや『宇宙大将軍』を自称するまでとなった侯景討伐を目論む子鵬は、甲冑すら両断する宝剣を託されるが…。
あとがきには、三国志ブームによる虚偽の歴史観の蔓延に対するアンチテーゼとして、
赤壁の戦いの真実に関する考察や、善悪を明確に描いたように思われる羅貫中が裏に仕掛けた罠の考察、
またマリーアントワネットの迷言やシンデレラ等、海外の逸話のルーツが実は中国にあった事やその逆の例の話など、
様々なエッセイが収録されており面白い。
拡張高く重厚な文体と、藤田和日郎氏の気合の入った挿画のコラボレーションも美しく、お薦めの一冊。
活字の魔力に酔い痴れよ
★★★★★
中華ファンタジーの伝道師・田中芳樹による、中国を舞台にした短編集。
個人的に田中氏の中国関連の全著作の中でも3指に入る名作で、
全部で5つの物語が収録されている。
第1話 『黒竜の城』
明の永楽帝の命を受け、東北辺境の地を督撫すべく派遣された亦失哈。
凍結した黒竜江を越えた彼は未知の城を見出し、そこに住まう不老不死の妖女に遭遇するが…。
第2話 『天山の舞姫』
唐の玄宗皇帝の御世、サラセン帝国の動向を探るべく派遣された李炎は、
故郷長安を遠く離れたフェルガナの地で、超常の力を持つ妖艶な舞姫・ゼノビアと運命の邂逅を果たす。
第3話 『長安妖月記』
唐代初期、老境にあって人格が一変し、未曾有の侵略戦争を企むようになった皇帝李世民。
兵部尚書・李靖は、皇帝の豹変の裏に予言に示された方師の暗躍がある事を知り、二人の武将を召集する。
第4話 『白日、斜めなり』
三国時代中期、魏より蜀に亡命し客将として迎えられた夏侯覇の、数奇な後半生を描く。
異なる視点から三国志演義を分析し、その虚実を浮き彫りにした作品。
第5話 『長江落日賦』
南北朝時代後期、一族を煮殺され魏より梁に亡命した侯景は、叛乱により武帝を殺害し皇位を簒奪する。
いまや『宇宙大将軍』を自称するまでとなった侯景討伐を目論む子鵬は、甲冑すら両断する宝剣を託されるが…。
あとがきには、三国志ブームによる虚偽の歴史観の蔓延に対するアンチテーゼとして、
赤壁の戦いの真実に関する考察や、善悪を明確に描いたように思われる羅貫中が裏に仕掛けた罠の示唆、
またマリーアントワネットの迷言やシンデレラ等、海外の逸話のルーツが実は中国にあった事やその逆の例の話など、
様々なエッセイが収録されており面白い。
浩瀚なる資料を元にした考察、格調高く重厚な文体、活き活きと描かれた群雄、凄絶な剣戟と
めくるめく歴史浪漫が渾然一体となったお薦めの一冊。
中国の自然や気候を興趣深く精緻に描写したこの本を読みながら、
北から南まで単独で中国各所を巡った旅行時の光景がありありと脳裏に思い出された。
ちょこっと三国志
★★★★★
『長江落日賦』です。
中国史を題材とした短編集です。
著者が得意とする中国史ものの中で、これは一番いいのではないでしょうか。
歴史ものは、史実を追求すればするほど、作家が操る自由度が少なくなってしまうという宿命を抱えています。そこにエピソードを挿入すると、かなりわざとらしい演出に見えてしまいます。
本書の諸作品では、そういった短所を感じず、楽しく読めます。中国史にさほど詳しくなくても、それほど読むのに問題は無いと思います。歴史、を描いているというよりは、歴史を題材として主人公の人間としての姿を描いているからです。
特に、ちょっとファンタジーな展開がある前半の作品が、自由度が高く、面白さを上手く演出していました。
作品もヴァリエーションがあり、明代の黒竜江、唐代の西域、唐貞観の長安、三国時代などを舞台としています。
「白日、斜めなり」の野蛮国蜀
★★★★☆
誰も三国志ものを書かなくなったら
三国志ものを書くと言っていた田中芳樹だが、
短編ならひとつ書いている。
この短編集に収録されている
「白日、斜めなり」が夏侯覇を主人公にした三国志ものである。
魏の皇室にも蜀の皇室にも血縁関係のある
貴公子夏侯覇の数奇な運命を描いた佳作。
魏から蜀に亡命する破目になった夏侯覇が可哀想でならない。
史官職がない文化後進国、
軍国主義の野蛮な蜀の一員となって戦う夏侯覇の苦悩は
たいへんなものでありましたな(w
戦場で逃げ遅れた敵の家族の美少女を
拉致して手篭めにして結婚してしまった
張飛がすべての元凶である。