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静寂の叫び〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

価格: ¥987
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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死の声を聞きながら ★★★★★
デレク・パーフィットの傑作『理由と人格』の訳者あとがきを読み、忽然と「肉はもう十分食べた」と思い、魚菜食(主義?)に転じたてからちょうど十年。『アニマル・ライツ』という著書をもつマーク・ローランの才気に満ちた映画論『哲学の冒険』の第7章は、食肉(解体処理)の対象となる動物にとって人間こそが「エイリアン」であるという事実を突きつけてくる。見ないでおく知らないでおくことはどんな存在論を構成するのか? とこんなふうな指摘を並べただけで、なにか恥ずかしい自分をカミングアウトしているような気分になる(それこそ、いろいろな意味で!)。そして「傷つく」というこの感覚はダイアモンド=クッツェー(=コステロ)から教えられた。
 本書の主役は「食肉解体工場」(の廃屋としたところにディーヴァーの鋭さがある)であろう。原題は「乙女の墓場」であるが、小説冒頭で予感させるほどむごたらしい殺戮が続くわけではない。わたしはむしろ工場の描写や家畜たちの慟哭を書き込むディーヴァーの筆致に緊張したが、人質解放の本筋は安手の「ピカレスク小説」として読んだ。本作より一年まえに発表されたハンターの傑作『ダーティーホワイトボーイズ』よりは数段劣るそれとして。お得意の「どんでんがえし」もいわゆるショートケーキに載っている半乾きの苺のようなもの。なくてはつまらないが、食べてみてそれほどおいしいものではない。邦題『静寂の叫び』がとても意味深い。差別語との格闘であったであろう訳者の苦労は察してあまりある。
読み終わるのがもったいないくらいの最高傑作! ★★★★★
いわゆる"人質立て篭もり事件”が、ここまで面白く濃くかけるものなのか。
上下巻に分かれているが、スクリーンに映し出されるかのように鮮明に現場が見え
犯人や人質の息遣いも充分伝わってくる。

映画を観ている時、「あ〜、これでもう解決だ」と思うときがある。
そういう時、時計をふと見るとまだ時間が残って入る!
「これから状況がかわるのだ。どうなるんだろう」と思ったことが誰しもあるだろう。

まさに、この本もそんな感じだ。
下巻も終盤で終わりに近づいてるのにまだざっと100Pは残っている。
これで終わりのはずがない・・・そんな期待を膨らませながらい1ページ1ページ大事に読み進める。

上巻では、内部抗争。下巻では驚愕の結末へと流れていくさまは素晴らしいの一言。
この作品の凄いところは、最後まで読者をあきさせないところにある。
スリリングな人質事件の舞台裏で展開するヒューマンドラマ ★★★☆☆
本書でジェフリー・ディーヴァーはブレイクしたといわれており、続く<リンカーン・ライム>シリーズで一躍人気を博する以前の段階での最高傑作とされている。

’97年「このミステリーがすごい!」海外編第5位にランクインしている。

3人の脱獄囚が、聾学校の教師と生徒を人質にして、廃屋となった食肉加工場に立てこもる。FBIの危機管理チーム交渉担当者・ポターと、犯人側のリーダー・ルーとの交渉の過程がストーリーの大部分を占める。

人質を解放し、なおかつ犯人を逮捕するという難題。連邦の機関であるFBIと州警察、そして地元の保安官までもが絡む縄張りと権限争い。スタンドプレイで横槍を入れる州の法務次官補。スクープを独占するために侵入するマスコミ。そして実力行使に訴えようとする州警察の武装した人質救出部隊、人質の命を最優先する日本とは異なり、犯人逮捕のためならば「許容できる死傷者数」なるものが存在するのだ。ポターは、これらすべてに、現場責任者として対応しなければならない。

一方で、加工場内部の、人質の若き女性教育実習生の、凶悪な犯人に対する臆することない抵抗も見逃せない。彼女は、自身も障害者でありながら、独力で生徒たちを脱出させるべく死力を尽くすのだ。

とにかく想定されるあらゆる事態が、著者の綿密な情報取材により、ディテールまで詳細に描かれ、読者はどう転ぶか分からないドキュメンタリーを、手に汗握ってリアルタイムに観ているかのような緊迫感を抱く。

さらに、いったんは解決したかに見えた事件だが、ラストで、ディーヴァーならではの、“大どんでん返し”、“誰も予想だにしなかった結末”が待っている。

本書は、サスペンスフルでスリリングなミステリーとして一級品であると同時に、交渉に苦闘するポターの姿や、健聴者にはうかがい知ることのできない聾者の世界を見事に描いたヒューマンドラマである。
静寂の叫び〈上〉 ★★★★★
 幾多の人質解放交渉に目覚ましい成果を挙げてきたFBIの危機管理チームが召集されたカンザスの片田舎。三人の脱獄囚がろう学校の生徒達を人質にたてこもる。FBIが挑む人質解放という名のゲーム。

 交渉人ポターは、犯人の思考に同化して突破口を創りだすという交渉技術のみ。その技術が、冷静にして凶悪、狡知にたけた犯人にどこまで通用するか。全てはポターの判断にゆだねられる。不測の事態に悪化する状況下ポタ-は主導権を回復するべく電話回線の向こうにいる犯人との交渉に全能を傾ける。  

 人質の少女たちを通して語られるろう者の世界。その奥行きと広がりの豊かさが、人質交渉のハ-ドさと交錯し、物語に豊かなコントラストを与えている。人質解放交渉という非日常を日常にするポタ-の哀感と実習生メラニ-の若さ。更にタフな悪党ル-・ハンディ-の強烈な悪の魅力が物語全体を引き締めている。

 ポタ-によれば、FBI流の危機管理とは、あらゆる可能性を想定し被害を最小限度に抑えるに必要な犠牲なら躊躇しない、およそ感情や情緒の介在する余地ないものだという。その前提からブラフを連発するポタ-。人質の運命は盤面上で翻弄されるピンボールのように、得点を更新し、掛け金を釣り上げながら、OUT穴に向かって転がり落ちていく。

 中年男と若い女性の恋愛感情なぞの適度な通俗性で読者サ-ビスもするが、決して下品に堕すことがなく、善きことへの信頼をストレ-トに表明するディーヴァーの力強く前向きな作風は、根っから下品で根っから性悪説な私のようなひねくれ者には、とても染みる。

ずっとドキドキしながら読んでました ★★★★★
聾唖学校の生徒と教員を人質に取った、立てこもり事件を描いた作品です。

FBIの交渉人アーサー・ポターと犯人ルー・ハンディの息詰まる交渉戦がすごいすごい。綱渡り的状況なのに、ポターが時折「無手勝流」ぽい対応(経験に裏打ちされたものだけど)をするので、そのたびにヒヤヒヤ。
州警察、州知事、マスコミ、役人などこの事件で功名を立てようとする人たちとポターらFBIチームらとの間は当然しっくりいってないわけで、彼らの動きが緊迫した状況を更に面白くしています。要するに交渉だけでもイレギュラーな部分が多いのにその他数多くのイレギュラーがそれに輪をかけてあるので、それだけ面白くなります。

交渉の場面を詳しく書いたものは初めて読みました。

傑作です。ラストはちょっとかっこ良い(後半はどんどんスピードアップしていきます)。
映画化されたようですが聾唖者をどういう風に演出したのか、観たい気もします。