血沸き肉躍るものではない
★★★★★
SF冒険みたいな血沸き肉躍る戦闘シーンとか緊迫した危機一髪とかは無い。
しかし非常にどっしりとした安定感のあるストーリー。
やはり作者の年齢が関係していると思われる。
前半75%位はSFでないと言われても仕方がない。
人生のようなものを表現できている点で、死期の近い老人の老練な手腕、経験を感じる。
フェルマーの最終定理が何か異星人との交渉にからんでくるのかと思ったら何も無かったWWW。
むしろ題名も「黄金律」とか「定言的命令」のほうが良かったかも。
いろいろな定理の名前が出てくるので、Last theorem の意味が黄金律のほうだと解釈すれば、納得する。
作者の意図はそれなのかも?
「生きること」を考えさせられる佳作
★★★★☆
はじめ瑞々しく後半きな臭い。そして、いろいろな局面に対処しながら生きていくということに適応していく。最後はエントロピーに帰る。この本は、人生の一面を的確に表現していると思う。もちろんこんなに理想的かつ波乱に富んだな人生は得難いが、それでも万人に共通するイデアが描かれているようだ。
また、賢明であるということはどういう事か、という点についても考えさせられる。それぞれの立場を理解して対処する賢明さ、それを持ち合わせていながらも対処できない現実。これも生きるということに含まれているのだ。
さすが著名な作家の作品でありプロットも面白いが、それよりも、人生の円熟期にしか描けない奥行きを強く感じる。
読後感もあたたかく、「生きること」を考えさせられる佳作。
「遺作」であっても「代表作」ではない
★★★☆☆
クラークの「遺作」ということで、長年のファンとしてはさっそく読まずにはいられませんでした。「最終定理」という重々しいタイトルからして、きっとハードSFの大作なのだろうと期待もしました。
しかし読み始めてすぐ気がついたのはクラークの匂いよりもポールの匂いの方が明らかに強い作風です。それなりに読めたものの期待とはかなり違ったことは事実です。
また、軽い短編をいくつかつなぎ合わせたような不自然さがも気になるところです。はっきり言ってガッカリ・・。