時代がつくる「人生」、人生が刻む「時代」
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16歳の誕生日に泰子は若くして逝った母からの手紙を父から渡される。そこには戦時中に母が見出した「美しいものと善いもの」とが青春の証として綴られていた。そんな母とは時代こそ違えど、泰子は親友トシや淡い想いを寄せた西たちと輝かしい青春を郷里で過ごす。母の手紙の影響でスチュワーデスになった泰子を待っていたのは「それぞれの人生」。愛人のために身の危険を顧みず信用金庫の金を貢いだ親友トシは、己の罪を認めながらも「女としては後悔していない」と言う。また、西は昔の純朴な面影を残しながらも過激派の一員としてハイジャック犯となる。泰子の胸に深く影を落とした彼らの「生き方」には、母が手紙に残した「いつの時代でも必ずある、美しいものと善いもの」はあったのだろうか。