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鏡の中の少女

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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幸せになるために。 ★★★★☆
バレエに打ち込むひとりの少女、フランチェスカ。
鏡に映る自分の姿を見つめる。


もっと痩せなくては。

痩せれば、勝てる。


そして新しく誕生したのは、ケサ。

ケサとは、食べモノの誘惑に負けない確固たる信念を持ち、
無駄のない完璧な身体を持つ、
フランチェスカが創り出したもうひとりの人格。

物語が進むにつれ、
ケサはフランチェスカを呑み込み
ココロを蝕んでいくのです。


この小説は、拒食症に陥った少女と
その家族、さらに医師や入院患者たちとの
人間模様を描いた壮絶なストーリー。

拒食症を経験したヒトならば誰しも
食に囚われ、自分を追い込んでいくその過程に

共感と、焦りと、悲しみを覚えながら
読むことができるでしょう。


さるきちあまりに衝撃が大きかったのか、
一晩眠ることができませんでした。

摂食障害のムツカシイ専門書と違い、物語だからこそ、
この病気が持つ特有の世界に引き込まれちゃったのね。


仕事人間の父は厳格で癇癪持ち。
食事の作法にもうるさく、
フランチェスカは食卓ではいつもびくびくしています。

彼は絶対的権限を持ち、
自身の偏屈な信念に固持し、
さらにそれを他人にまで押しつける傲慢さも
兼ね備えています。

そしてそんな父に従順な母グレース。

フランチェスカには姉と兄がいますが、
二人はすでに家を出ています。

姉は問題児で両親は振り回されてばかりでした。
一方兄は成績優秀で自慢の息子。


ねぇ、

じゃあ、フランチェスカは?


両親にとって彼女は

「手のかからない良い子」

そして、


「うっかりすると、いることさえ気づかない…」


両親がフランチェスカの異変に気づいたのは食事時。

お皿の上で料理を細かく刻み、
ほんのひとかけらを口に運ぶケサ。

体重は目に見えて減少していきます。

ベッドに横たわり、浮き出たあばら骨を数えるケサ。

「骨って好き。」

美味しそうな匂いのする露店前を通るときは
頭の中で呪文を唱えます。

ケサ・ケサ…

父親に無理矢理食べさせられると
洗面所にこもり吐き出します。

怒鳴られても聞こえない。

ケサ・ケサ…

トイレの便座にはお尻をつけられない。
歯を汚す食べモノなんて食べれない。
部屋では狂ったように踊ります。

もっと痩せなければ。

ケサ・ケサ・ケサ…


オーディションに合格すれば
憧れのマダムにも認めてもらえる。

でもね、

やせ細った長身の身体に踊る力はありません。

それどころか、
バレエに対する興味すら失ってしまうのです。


もはやフランチェスカの念頭には痩せるコトだけ。


その後フランチェスカは強制入院、
胸にカテーテルを埋め込まれ
胃に直に栄養を送らねば死んでしまう、
そんな状況にまで追い込まれていきます。


どうして?何がいけなかったのでしょう?


理解ある医師の登場で
フランチェスカはココロを開いていき、
根本の問題が明らかにされていくんですけどね、

医師に促され、
フランチェスカは初めて本音を吐き出します。


私には居場所がないの。


両親に対して明かした彼女の胸の内。
その悲痛な叫びは両親には衝撃でした。



医師:「どう、ケサ?家族になにを望む?」

フランチェスカ:「わからない」

止まっていた涙がまた溢れ出した。

医師:「考えてみるんだ、ケサ」

フランチェスカ「わからないって言ったでしょ。
         わたし、わかりたくない。わかりたくないのよ」

涙が溢れ、そして言葉も溢れてきた。

フランチェスカ:「そんなものはほしくない。憎んでいるわ。でも必要なの」

医師:「どういうこと?何を憎んでいるの?」

フランチェスカ「家族よ。憎いわ。でも、ほしい。
        あの人たちをほしがる気持ちが憎い。
       憎んでいるの。憎んでいるのよ」

医師:「どうして憎んでいるの?」

フランチェスカ「ほしがる気持ちを憎んでる。
       だって、絶対手に入らないものがほしいなんて」

父:「いつだって、おまえが望んだものはなんでもやってきたじゃないか」

フランチェスカ:「わたし今までに何か望んだ?
         わたしが望んだことってなに?」

驚きはショックに変わった。

父:「そんなになかったと思うが」

フランチェスカ:「そんなになかった?
         なにもなかったって言った方がまだましよ。 

         わたしはなんにももらってない。
         グレッグ(兄)は褒められた、スザンナ(姉)は
         関心を持たれた。で、わたしは何にも。

         パパから何にも、ママからは何にもよ。
         ママはわたしのこと、好きでさえない」

フランチェスカ:「ママはわたしのことなんて、
         全然愛してくれなかったし、これからもそうよ。
         ママはスザンナを愛してて、わたしにはそうじゃない」

最後の感情のほどばしりに、みんな、ケサ自身も驚いた。

医師:「ケサ。僕はきみを誇りに思うよ」


注)一部抜粋です



愛の反対は憎しみではなく無関心である

とは、マザーテレサの言葉ですが、
フランチェスカが身を滅ぼしてまで欲しかったのは、
両親の関心、愛情だったのです。

拒食症は、フランチェスカの
最後のカードだったのです。


この小説には
家族間の問題が色濃く描かれています。


でもね、
きけん? ★☆☆☆☆
大学生に入ってダイエットしようかなーと考えていたちょうどその頃、この本を手にしました。はじめはストーリーにひかれてどんどん読み進めていったのですが、健全ではない食習慣をケサから少し引き継いでしまいました。あさはかにも、自ら摂食障害の道を知り、無意識に踏み込んでしまったような気がします。その後、一人暮らしという生活環境のちょっとした変化がストレスが引き金となり、程なく過食に転向してとても苦しいです。
摂食障害の私にとって、ベスト3の本です ★★★★★
私は拒食症から過食嘔吐になり、13年。治療を始めてから、大分良くなりました。治すために様々な本を読んだけれど、大概は見当違いな内容ばかりでした。医者が書くものは病気の原因が偏見的だし、患者が書くものは気持ちに共感はすれど治るきっかけについてはピンボケ。

ところがこの本は違いました。患者である少女の視点という主観的な描き方にも関わらず、取り巻く家族の問題、治療の現状、病状の克明ななど客観的に理解できるように仕上がっています。
この著者である心理療法士はよほど洞察力が高いのか、この病気の心理状態を大変よく理解してます。

大体の医者は、私たちの抱える「自己否定感」に気づいてくれません。

自分の意思で、痩せることを断固として辞めない、自己中心的な病気だと言います。
でもこの作者は違います。拒食症がどれほど自分を突き放して、生きていて申し訳ないと考えているか、そしてそれがナゼ起こるのかを、見逃しませんでした。

当然、生育環境は人それぞれで、拒食症すべてが同じ原因から発症するわけではなく、患者個々に合わせた心理療法をしなければいけません。
それは著書が常にどれほど多くの精力を使い、ぎりぎりの駆け引きを続けているかを想像させます。
こんな人に治療の手助けをして欲しいと心から思った一冊です。

読み終わった頃には自分が少女と同じ一年間のカウンセリングを受けたかのような内省的な気分になります。ベスト3のもう一冊は同じ著書の「鏡の中の孤独」です。同じ少女がついに「私は太っていない」と考えられるように回復するところを描いています。
この二冊は、患者、家族、治療者など、この病気を関わる人には是非読んで欲しいです。

ちなみに、もうベスト3の最後の一冊は「あなたの愛する人が拒食症になったら」です。これも同じように「自己否定感」に焦点を当てています。

全ての問題は親の【無関心】から・・ ★★★★★
現在、小学校教員を目指して勉強しています。図書館の教育心理学コーナーにあった「心理カウンセラーが勧める本」の中で、紹介されていたのがこの『鏡の中の少女』です。

少女は、ちょうど女性として芽生える思春期、究極の人間美を求めるバレエを習っているところから始まり、すぐに彼女の危うさ、不安定さを察します。でも、それがどれ程、深いのか、何に起因するのか、始めは全くわかりません。親になった父、母がしっかり自分と向き合ってこなかった、ある種の幼稚さ、或いはわかっていて先延ばしにしてきた身勝手さが、一番、末っ子で、ずっと家族を客観的に見てきた、そうゆう立場にならざるおえなかった、少女の長く深い深い苦しみとなって表面化していきます。

このお話しは、一人の少女を通して、拒食症という病気の深さ、家族がよくも悪くも子どもに与える影響の大きさ、人の親となることの重さ、を切に訴えてきます。同時に、少女を中心に、父・母・姉・兄、彼女の治療を橋渡しする医師、職業慣れしたカウンセラー、そして彼女を癒す切り口を見出す人間味溢れるカウンセラーなど、ひとりひとりが物語の中で、彼女を通して自分を見つめ、苦悩していきます。そして、医師やカウンセラーを始めとして、病院にいる様々な職業の人が出てきますが、どの専門職に就いても、大切なのは時として知識よりも、人間性なんだなぁ、と思わされます。

結末は、大変、重く考えさせられます。少女が完全回復するという結末ではありません。読んだ限りでは、彼女の容姿が元に戻ったり、完全回復した、ということでもなかったように思います。でも、重く深く大変な現実はそのままに、夢でも童話でも無い、現実の『希望』がみえてくる結末です。ひさしぶりに読み応えのある本でした。心理学に興味がある方、教員・カウンセラーを目指す方、お子様をもつ方、どうぞ一度は手にとって読んでみてください。人は皆、幸せになるためのバランスをとるために悩み、葛藤していることがわかる本です。

ダイエットについて考えさせられる ★★★★☆
大学生の頃に読んだのですが、行き過ぎたダイエットの結末を知ることが出来、何が大事なのかわかった気がします。細い人がエライみたいな世の中で、日本でもこういった若い人はどんどん増えてると思うし、特に流行に流されやすい中高生には行過ぎたダイエットの恐ろしさを痛感して欲しいと思いました。快方に向かう結末に、こんなにうまい話は・・と考える気持ちもわかりますが、それよりも体を痛めつけてまでのダイエットの危険を知るにはいい本だなと思います。