愛のあるSF
★★★★★
近代SFの中で、間違いなく最高傑作のひとつです。
特に表題にもなっている「あなたの人生の物語」は、SFと言うジャンルを超えて「愛」と「存在」について語っているもっとも優れた作品のひとつだと思います。あのイーガンの「ひとりっ子」がSFらしい量子論を軸にした同様のテーマの良作とするなら、こちらはフェルマーの最終定理と異星言語で、ほんの少しSFっぽいエッセンスを入れただけの、文学的に優れた傑作です。ひとつひとつの言葉は選び抜かれ、プロットも練り込まれ、何度か読み返しても違う視点、違う意味合いの発見が楽しめます。
他にも「理解」や「72文字」など、未知の世界に魅了されまくりです。ただ、冒頭の作品「バビロンの塔」は、他の作品と比べてちょっと間延びした感じなので、そこを少し読んだだけで、あれ?今ひとつ?と思わないようにご注意を。
神の存在のプラスマイナス
★★★★★
収録8短編のうち『地獄とは神の不在なり』のアイデアが最も好きである。
天使が現れるが、現れるにあたって、奇跡を起こす。
しかし奇跡とはどういうものかだれが決めたのか。
ちなみに現在、ローマ法王庁から聖者や、福者に任じられる際にも奇跡を起こすことが条件である。
超次元
★★★★☆
短編でいくつかの話で構成されている。
私は『理解』が一番面白かったかかな。
しかし、少し難しい。特に0で割るが、数学が嫌いな私にはかなり読むのが苦痛であった。
そしてSF初心者にはもってこいのようで、オススメできないかもしれない、この作品。
SFとしては最高だと思う。
アイデアに光るものがあるが、小説として展開がヘタクソ
★★★☆☆
SF・ファンタジー短編集。
ブに100円であったので買った。
100円の価値は充分にあります。
モチーフとしては言語学・数学SFが多く、
テーマとしては人類進化SFが多い。
形而上学の問題に科学で切り込む姿勢は、
イーガンに似ているし、
イーガン同様、冷静に考えるとギャグの世界である。
SFは宇宙人や超能力や神や心といった存在しないものをネタにしてもいいのだが、
架空論理の切れが表題作以外は弱い。
一個目の短編はただのファンタジーと言うか、
小学生でも考え付く不思議な話で激しく脱力したw
アイデアに少し光るものがあるが、
料理の仕方がヘタクソな作品が目立つ。
全作平均値以上と解説では言っているが、
平均値以上なのは表題作だけだと思う。
数学ネタも数学の面白さを訴えるのには成功してない。
0で割れば1=2も証明出来るという有名なネタは出てくるが、
0ネタなら、0を掛ければ何でも0になる以外に、
0回掛ければ1になる
(10の2乗は100
10の1乗は10
10の0乗は1
10のマイナス1乗は0.1)
10のマイナス2乗は0.01)
とか、2乗して0になる0以外の数=超数
の話題も出して欲しかった。
数学の話題も出るが小学生でも理解出来るネタばかりなので、
数学嫌いでも恐れる必要はありません。
数学SFとしては、
四色問題の反例をでっち上げたマーチン・ガードナーより芸がない
簡単な文学寄りの作品ばかりなので、
単純なメタファーに感動出来る人は感動して下さい。
SF初心者に勧めるのに良いと解説者は言っているが、
こんなもん勧めんでも、
アシモフやクラークの短編集を素直に勧めればいいと思う。
短編の名手
★★★★☆
タイトルが気になって読んでみたら、グングン引き込まれた。
凄い作家を見逃していた。
さりげなく、凄いことを描いている。
じっくり考えさせる内容を何気なく書いているところが凄い。
目が話せない作家の一人になった。
ユービテイク
★★★★★
ジャケ買いならぬ、表紙買いをしたが、こんなに出会って良かった!と思える作品はそうそうない。SFと言うよりも新たなジャンルではないだろうか。
記述師文庫堂
★★★★★
6/24読了。現代SFの最先端。「チャンを読まずにSFを語る無かれ」と誰かが言ったとか。「バビロンの塔」はクラークの『天の向こう側』所収の「暗黒の壁」みたい。「理解」はチャン版『脳男』+『心の鏡』。心が発達に伴い身体制御も向上するのが素敵。「ゼロで割る」は大好きなタイプのSF。心ならずも1と2が等価値で数学は自己撞着にすぎないことを証明してしまった数学者に訪れる世界の崩壊の物語。表題作の「あなたの人生の物語」は、おぉ?『サイン』?な始まり。異質な言語を探る物語はいろいろありますが、目的論的言語とは・・・すごい奇想。泣けるし。「七十二文字」は72字で構成された名辞で動くオートマトンがある世界。『鋼の錬金術師』かな?「地獄とは神の不在なり」は最も好きな短編。天使がたま~に降臨する世界。降臨のとばっちりで妻を失ったニールがいかに生きるかというお話。天使が自然災害にすぎないのが面白すぎる!「顔の美醜について」は、カリーという美醜失認処置を大学で認めるか否かで大論争が起こる話。どれも面白すぎ。
Mani*Mani
★★★★★
すばらしく面白い短編集。選んだ素材の深い深い中心から極上のエッセンスをくみ取ってきて、それをちゃんとしたドラマに組み入れる。希有な作家。しかも若い!
ツボ部屋
★★★★☆
現代の最高のSF作家の一人に数えられるテッド・チャンの短編集。おすすめのお話は『顔の美醜について』というお話で、ルックスの良い人ほど社会で成功するという、容貌差別を解消するために「カリ-」と呼ばれる人の顔の良し悪しを判断する能力を奪う手術が普及した社会で起こる様々な問題が描かれています。醜い人がいなくなるということは、美しい人もいなくなるということであり、それだけ世の中が味気ないものになってしまうのです。勝者の影には敗者がいるというジレンマを描いた考えさせられる話です。他のお話も面白いので、是非。
イぐジすてんズ
★★★★☆
過去現在未来を同時に観れる視線を持ったらば。何かをひらめく時。それは未来のコトを思い出したんだと。自由意志と歴史のトレースは矛盾しない等、面白い提案がたくさんありました。
ぽちこブックス
★★★★☆
とても好みです。もっとどんどん作品を出してほしいです、チャンさん。
玄々境々のすりきれ
★★★★★
人類の社会の基盤となる枠組みをひっくり返してしまった時、「その人」がどうなってしまうのか。当事者でなくても直面する問題を、内側から見せてくれる。作者の初短編集であり、全作品。
読みあさり堂
★★☆☆☆
この本は全8作の作品集ですが「これはSF?」といいたくなるような作品もあります。SFとは奥が深いなあと思わせる本です。
気持ちが沈んでいるときに読むともう1段…
★★★★☆
気持ちが沈んでいるときに読むともう1段階沈めます。その上で前向きにもなれるかなって感じです。