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祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

価格: ¥1,008
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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アイデンティティネタの印象は強いですが ★★★★☆
表題作を含む11作を収録した短編集。

毎日異なる他人の体で目覚める「私」、次々に並行世界を移っていく「私」、「私」とは一体何か?
また、未来のことが全てわかっていてその通りにせざるを得ない行動、
化学物質によって否応無く覚える感情は、果たして「私」のものと呼べるのか?

そういったアイデンティティについて扱った話が多い印象ですが、
同時に信じていたものが一瞬でひっくり返るような、いわば悲劇のカタルシスも
感じることができます。

ただし、普通に読んでいると「えっ、ここで終わり?」というような
オチの理解しにくさもあるので、流し読みでは楽しみにくいかもしれません。
非SF者の感想=「ホーガン以来!」 ★★★★☆
 私はSFはたまにしか読まない。これまでのマイベストSFはホーガン『星を継ぐもの』。圧倒された。

 雑誌のSF特集でオールタイム・ベストの1位にイーガンの『万物理論』が挙げられていて、「イーガン以降」という言い回しさえあるらしい。こりゃ、読むべし!だが、いきなり長編は途中挫折のリスクも大きいんで、まずは日本オリジナル編集の第一短編集である本書からトライ。

 まず、冒頭の「貸金庫」から圧倒されたねー。地味なタイトルからは予想外の奇想天外の世界観。科学的にはありえねー設定なんだが、思考実験乃至幻想譚としては一級品。

 続く「キューティー」は現在〜近未来にはさもありなん設定。子供の無い私には切実感強し。

 3作目「ぼくになることを」これもボルヘス的な幻想譚として秀逸。自己意識とは何か、という問題に真正面から取り組んでいる。

 「繭」・・・これも題名は地味だが、内容はスゴイ。主人公が、ごく普通にゲイで、同性愛者に対する差別を扱っている。しかも、生体的理論説明もいかにも本物っぽい。
 
 「百光年ダイアリー」・・・タイム(予知)・パラドックスを最新科学風ガジェットを駆使してそれらしく理屈付けている。へー、って感じ。でも真剣に付いていこうとするとかなりシンドそう。

 「誘拐」・・・ハリウッド映画にすれば面白そう。ってか、ハリソン・フォードを主役に想定して読んでいた。

 「放浪者の軌道」・・・これは設定が良く分からなかった。量子力学的な説明なのかな?

 「ミトコンドリア・イブ」・・・人類共通祖先を求める一種のカルトの対立。レイシスト(人種主義者)のパロディか?

 「無限の暗殺者」・・・雰囲気的には映画『ブレード・ランナー』的世界観。だが、「可能世界」、「バージョン」という設定が難解、ってかかなり無理がありそう。

 「イェユーカ」・・・アフリカを舞台にした、エイズみたいな難病に取り組む医師のヒューマン・ドラマ。ラストは結構、感動的。

 「祈りの海」・・・ヒューゴー賞&ローカス賞受賞、ってんで期待して読んだが、うーん。宗教にたいするパロディだろうなあ。一神教の伝統の無い日本人にはあまりピンと来ないと思う

 総合的評価=とにかく設定の突飛さ、世界観の多様さに眩暈がした。意図的に多様な傾向の作品を集めて編集したそうだが、非常に厚み・満腹感のある作品集と言えよう。でもSF慣れしていない読者には付いて行けないほど、科学的ガジェット(小道具・設定)は多用されているので、誰にでも薦められるシロモノではない。

人として人類としてのidentityを問う短編集 ★★★★★
イーガンの共通した命題である、人として人類としてのidentityを問う短編傑作集です。科学的手法を用いた人類のあくなき挑戦に対する絶賛の賛同と同時に、人類としての限界を認知することに対しての人類への慈愛の念が、最近の長編の難解さ無しで、ストレートに伝わってくる名作集です。初めてイーガンを読まれる方にはお勧めです。
「わたし」の意味 ★★★★★
ある日、普段どうりスタスタ歩いているとイーガンさんに出合った。
イーガンさんがいうことにゃ「ちょっと、自分の足元を見てごらん」。
で、下を見ると…あると思ってた地面はなく、真っ黒な虚空が広がるのみ。
それじゃ、どうして歩けていたかというと、
踏み出そうとする先に、ちょうど足がのるだけの大きさの円板がパッと現れ、
そこに足がのってもびくともしないけれど、足が離れると、すっと消える。
ただ、これの繰り返しだったのだ。
気づいてしまったこのときから、恐怖と不安に捕われる。
その円板は何なのか、どうやって現れるのか、これからも現れてくれるか…?
いままでずっと大地を踏みしめてると思ってたのに!

もちろん、”自分って?”について考えたり読んだりしたことはあるけれど、
この本の物語の中で様々な角度から直面させられると、やはり感じる重みが違います。
(特に「ぼくになることを」、ズンときます)
それに、イーガンさん、やっぱり物の語りがうまい!
「ぼくになることを」のどんでん返しは見事だし、
「無限の暗殺者」はおもしろいパズルを解いた気分にさせてくれるし、
「繭」は上質のミステリーだし、「貸金庫」のラストの、主人公の健気さは泣かせるし…。
それに、素人考えで、EPRは瞬間的な情報伝達に利用できるんじゃないかと思ってたんだけど、
「ミトコンドリア・イヴ」の主人公のセリフ数行であっさり霧消。うぅ、確かにそうです…。
これは、私にとってうれしいおまけでした。

ところで、私が読んだのは三刷なんだけど、425ページのこの文…
「…兄は、微笑みを絶やさずにはいられないのだった。」
あれ?

私にはついて行けませんでした ★★☆☆☆
~量子論の理論や思想を拡張した作品が多いので分かりにくい、
という面はもちろんありますが、解説を読んで気付いた、
アイデンティティの問題が大きいようです。

ただでさえ不確定性という、ややこしい量子論がベースにあるのに、
一人称“視点”(必ずしも一人称“記述”ではないですが)なので、
読みにくさが増しているので、
合わないとなった人~~にはどの作品も徹底して合わないでしょう。~