闇に堕ちた男が見つけた伴侶
★★★★★
前作「ハイランドで月の女神と」で意味深な終わり方をしていましたが、この第五作目で真実が明かされます。
兄(前作のヒーロー)を救うために誓いを破り、闇に堕ちたヒーロー。徐々に侵略してくる自分の中にいる邪悪な存在をどうにかするべく、現代のニューヨークで古い文献を盗み出して(後で返しに行ってますが)調べ物をしていています。
そんなときに出会ったのが博物館で働く考古学好きなヒロイン。皮肉にも闇に堕ちたために出会えた彼のためだけの伴侶。最初から重大なものを背負っている二人が、行く先々の土地や時代でどんどん愛を深めていく情熱的なお話です。
シリーズの特徴である、ヒロインにメロメロヒーローは今回も健在です。少し天然が入っているヒロインも可愛い。
最後が「エライ人が出てきてパパッと解決」という感じで少々唐突な感じがしますが、官能的で、笑いあり、涙ありな娯楽要素満載作品なのでとても楽しく読めました。
今回は一作目から出ているキャラクターが久しぶりに登場していて、ずっと繋がっているシリーズなのだと改めて再認識しました。しかも次のヒーローはそのキャラクターのようで、ますます目が離せないシリーズです。
ハイランダー・シリーズ最高傑作
★★★★★
カレン・M・モニングの「ハイランダー・シリーズ」の最高傑作と言えるのが、この「ハイランドの白い橋から(The Dark Highlander)」とその前作「ハイランドで月の女神と(The Kiss of the Highlander)」です。
強力なドルイドの一族に生まれた、ドゥルスタンとその双子の弟ダゲウスのマッケルター兄弟が主人公のこの2作は、大きな物語の前後編をなしており、本作の主人公は、前作で愛する兄ドゥルスタンを死の運命から救うために、妖精族との誓いを破って時を超え、歴史を変えてしまったがために、闇に堕ちることとなったダゲウスです。
兄のドゥルスタンが、さんさんと輝くハイランドの陽光を印象させるのに対し、弟のダゲウスは、真冬の凍てついた夜に荒野を照らす月の光のよう・・・・
彼は自分の中で力を増していく闇の存在をなんとか押さえ込みつつ、遠くから兄を見守り、救われる道を模索しながら永遠とも言える歳月を生きながらえるうちに、やっと運命の女性とめぐりあうのですが、彼の中で蠢く太古の悪霊は、日一日と彼をむしばんでいき、彼等を滅ぼすにはダゲウス自らも死なねばならないことがわかり・・・・恋人達の最期の日々の、そりゃもう切ないこと!人一倍愛情に富むが故に、道を踏み外してしまった弟を思いやる兄の視線の優しさにも涙です。そして衝撃のクライマックス!そこから先は、大の男でも涙なしには読めませんぞ!
実は私、本作(というかダゲウス様)に惚れ込んでしまい、オーディオ・ブックまで購入してしまいました。が、このオーディオ・ブックは、朗読している方が大袈裟すぎて、ダゲウスさまの台詞まわしがまるでダース・べーダーみたいに聞こえてしまい、苦笑してしまう代物でございました。(女性のパートまでその人が読んでいるというのは、さらに問題かと・・・)ビジュアル的にも壮大なこの作品、どこかで映画化してくれないでしょうかね。(ダゲウス様役はジェイムズ・ピュアフォイがいいな・・・ さて、カレン・M・モニングの「ハイランダー・シリーズ」は全作デル・ブックスからペーパー・バックが出ています。「ハイランドの白い橋から」の原タイトルは"The Dark Highlander"The Dark Highlander「ハイランドで月の女神と」の原タイトルは「The Kiss of the Highlander」Kiss of the Highlander (Highlander 4)、こちらはジャケットも雰囲気が素敵です。翻訳版と原著をあわせて読んでみるのも一興かとおもいます。