このように身近な事象の中から集めた化学に関する70の疑問を、親子の会話形式にしてやさしく解き明かしている。著者は大学の研究者や教師などからなる日本化学会の5人のメンバー。質問は素朴ながら虚を突くものがほとんどだが、それに対して、化学の原理を踏まえ、丁寧に答えている。「サウナは100℃くらいだっていうのに、なんでヤケドしないの?」という問いには熱伝導、熱容量、気化熱などから、「フグは猛毒をもつらしいけど、なぜ自分の毒にやられないの?」という問いにはイオンチャンネルから、その答えを導いている。
元素記号を丸暗記するような化学の授業には興味がもてなかった人もいるだろうが、本書は日常生活にまつわる不思議を解決してくれたりして、生きた学問としての魅力が感じられる。「植物はなぜみんな緑色をしているの?」などと突然質問してくる子どもはいそうだが、即答できれば親の株も上がるかもしれない。(棚上 勉)