かなり好き嫌いの分かれる本だと思います。
この作者さんははじめて読んだのですが、「９００円の価値はないな」と感じました。
まず線がとても荒いです。ボールペンでの落書きみたいに見える絵。
それを味ととらえるか、単に雑と捉えるかで評価が違ってくるのではないでしょうか。
また内容ですが、設定などは悪くないし面白そうなものの、表現力がついていっていないように思いました。
線が独特すぎて何を描いているかわからなかったり、「におわせる」箇所が多いわりにそれを解消できていなかったり。
最後でいっぺんにいろいろな説明がされるのですが、それまでの設定がちゃんと描かれていなかったためか、事前にあらすじなどを頭に入れておかないと一読しただけではさっぱりわかりません。
作者の思い入れが強すぎてかきとばしすぎてしまったような気がします。
ラストの一ページは、もっとしっかり描き込めば感動の一ページになったと思うのですが、
絵が雑すぎてシュールなギャグにしか見えませんでした。
大判で９００円コミックスというにはかなり厳しい作品でした。
表紙の絵や扉絵はなかなか素敵だっただけにとても残念です。

昔から作者の本が大好きで、単行本が出るのをいつも楽しみにしています。 良かったですよ!!今回の単行本。深い満足感が得られました。16、7年ほど前から構想があったそうですが(だからイラスト集のタイトルと同じ『ゼロ』で、中にあったイラストが扉絵になってたんでしょう。)、いや見事に熟成されていました。 最高!!

主人公は隻眼の運び屋の青年。一国の女王から、政略結婚先から助け出されたばかりの王女とその護衛を新たな政略結婚先に送り届けるよう依頼され……、というお話。ファンタジーです。

かなり痛々しい始まり方をしますが、読後感は爽快。丁寧に読んで行けば何となく先が見えはするものの、二転三転する仕掛けのあるストーリー構成で、張られた伏線がきちんと回収されていく爽快感は格別です。
最初はヤなおばちゃんにしか見えなかった女王の真意が明かされた時、不覚にもほろりと来てしまいました。

絵柄は好き嫌いがあるかもしれませんが、ほどよくほぐれた端正過ぎない線がストーリーの雰囲気に良く合っており、個人的な評価では文句なし。

最近読んだ単巻のファンタジー漫画の中では、出色でした。