レビューでは、これらの文章はドストエフスキーが恰も「自分自身について語りたい」が故にこの文章群を書き続けたかのように語られていますが、実際の内容は、(レビューにもあるように)1873年に彼が編集長を務めた雑誌〈市民〉、及び1776年から彼が独力で発行していた月刊誌〈作家の日記〉に発表した批評文(文芸批評、或いは政治・社会批評)及び数編の短篇小説(著名なところでは「百姓マレイ」や「おかしな男の夢」、「柔和な女」など)であり、個人的な日記は一切ありません。
これら計六巻の書物には、ドストエフスキーの諸作品を読む上で極めて重大な示唆を与えてくれるに違いない文章に満ち満ちています。自殺の問題、未成年層とりわけ子供達に対する憂慮、卑屈さと自尊心について、民衆への篤い信頼、キリスト教(ロシア正教)への深い信仰……
およそ彼が小説で扱ったテーマの内で、この「作家の日記」で扱われずまた更なる展開を施さなかったものは何一つありません。
ドストエフスキーの小説を愛読されておいでの方、またかつて愛読されていた方。もし未だこの六巻本を手に入れられていないのでしたら、是が非でも手に入れて通読されることをお勧め致します。
ドストエフスキーに興味はあるんだけど――という方も、いずれ手にされる機会があるのでしたらぜひ読んでみて下さい。