破滅を願った主人公
★★★★★
ギャンブル好きで有名なドストエフスキーが、自分の体験から書いた
あるギャンブル狂の話。本書は借金の返済をするために、30日弱で書
き上げたといい、いわくつきの作品でもある。
まず結論から言うと、非常にもって面白い。ロシア文学らしくウィット
でユニークな表現、ストーリーの勢いなど一流にエンターテイメント
した文学作品である。ドストエフスキー本人が借金で苦しみ、ギャン
ブルで一発逆転を狙ったという体験、そして自らの恋愛体験が昇華さ
れ、激しさと虚しさとが入り混じった物語になっている。
大学を出てとある貴族の家で家庭教師をしている主人公。その家族は
表面上は貴族らしい生活と振る舞いとで飾られてはいるが、彼らを取
り巻く状況はかろうじてぴんと張られた糸一本でつなぎとめられてい
るにすぎない。それが、一旦切れてしまうとどんどん転がり落ちてい
く。その発端はルーレットという運命の輪から生まれ、主人公をも押
し流していった。
賭博の力とそれに魅了される人々
★★★☆☆
作品の中では、ロシア人の性質としているが、人種に関わらずとも博打に熱狂する素質は誰にでもあるので誰でも楽しめるのではないでしょうか。ドストエフスキー自身の経験を踏まえて書かれていて、ルーレット(オンラインカジノも含め)の魅力と魔力が上手く描写されています。
翻訳のズレのせいか、会話文をはじめとして細かい所での違和感はあるものの、賭博場での流れは上手く表現されているので☆三つにしました。
また、ドストエフスキーの巧みなところは、賭博者本人と賭博者を見る周りの人達の大きなズレをわかりやすく表現している点だと思いました。
失敗作だと思っていました・・・・
★★★★★
賭博者の心理が巧みに描かれている・・・・確かにそうなのでしょう。しかしながら、賭博に手を染めたことのない私ですが、その私が想像している以上のものが描かれているとは感じられませんでした。この作品は、締め切りに追われて急いで作られたらしいし、失敗作なのでは?と思っていました。・・・・この本に出会うまでは→『名作の読解法』(塚崎幹夫)!!この中で『賭博者』の解説がなされているのですが、その読み込みの深さが半端ではありません。すごすぎます。「ポリーナの愛は謎でしかないか」この解説を読むと、『賭博者』が全く異なる小説に思えてきます。『賭博者』を読んでから、是非『名作の読解法』を読まれることを、強くおススメします!!
体験に基づく迫真の博打小説
★★★★☆
深遠な題材をテーマにした大作を描き続けたドストエフスキーが、自らの私生活の浮沈を掛けて書き下ろした異色賭博小説。ドストエフスキーの博打体験が活きている。
主人公の青年は愛する女性の窮地を救うためカジノに向かう。ここから賭博にのめり込んで行く登場人物達が描かれるのだが、賭博自身が持つ魔力と、人間心理を描かせては天下一品のドストエフスキーの筆力によって、読者も賭博の魅力に引き込まれる。私は麻雀をするくらいだが、学生時代に放心状態のまま毎日深夜3時頃まで卓から離れられなかった事が思い出される。主人公は大勝ちし、女性に報告に行くのだが...。
賭博の持つ魔力を卓越した心理描写で描いて、読む者も破滅へと誘う異色小説。
さすが経験者
★★★★☆
ドストエフスキーは文章の達人はいうまでもないながら、経験がいきている所が買う価値あり。賭博好きな人がはまる心理描写はづば抜けています。小説家で文章上手い作家は多々いれど、概して他の心理描写が弱かったり、勘違いが多いもの。そういう意味では、ドストエフスキーは非の打ち所がありませんね。