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地下室の手記 (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「救いのない世界」:この作家の例外的作品かも? ★★★☆☆
 この作品は、空想的社会主義運動からシベリア抑留を経て、インテリの自意識による社会革命の不可能さを徹底的に思い知らされたドフトエフスキーが、素朴なヒューマニズムからキリスト教的大作へ転向する端緒になった作品として位置付けられている。

 さて、カミュは「シーシュポスの神話」において、最後の最後でキリスト教的救済と一体化する点で、ドストエフスキーの文学は不条理になりきれていないとして批判している。カミュにとっては、優れた作家というのは「世界」との絶え間ない軋轢に負けず、かつ恋焦がれながら一体化を拒否し生命を消尽するような、殆ど永劫回帰(ニーチェ)な運動を語る存在だった。そういう意味では、カミュのドフトエフスキー解釈は多分正しく、彼が批判したキルケゴールやハイデガーにある宗教性に共通する意識の跳躍・高揚から逃れられてはいない。

 ところが、上記のように転換点として位置付けられる本作品の場合、宗教的救済が全く描かれていないのだ。(どうも検閲の結果らしい。)肥大した自意識を持つ貧しきインテリの主人公が、ひたすら周囲と軋轢を持ちつつ悩みながら、最後は半ば狂気に犯されつつ自閉していく。ステレオ・タイプな引き篭もり論と関連づける読解が珍しくないことも頷ける展開だが、そこには救いも何も描かれていない。有名だけど、ドフトエフスキーとしては珍しい作品なのかもしれないですね。

 星の採点が辛い理由は、この主人公の悲喜劇的な自意識の肥大っぷりが単純に鼻についたからです。現代日本でも十分読むに価する作品だとは思っています。
「破壊的」な本 ★★★★★
この本は、享楽的な楽しさを得るために読むような本ではない。

"ぼくは病んだ人間だ・・・ ぼくは意地の悪い人間だ。およそ人好きのしない男だ。ぼくの考えでは、これは肝臓が悪いのだと思う。"

という印象的な文章で始まるドストエフスキーのこの作品は、彼の後期の大作(罪と罰、カラマーゾフ、悪霊など)への転換点をなし、またそれらを理解する上での「鍵」として捉えられている。しかし、この作品は、ただの「鍵」には収まりきることできない程の力強さを持って、人間の抱える暗い闇を、手記という形で我々読者に語りかける。

「まともな精神」の持ち主なら、堕落した人間性を突きつけられて、読んでいて嫌になるか、この本の主人公の言っていることは自分とは関係のないこととして割り切るか、のどちかなのではと思う。ここで僕が言う「まともな精神」というのは、自分の精神が堕落していないと思い込み、異常のカテゴリーを自分から切り離しているような人物、のことだ。

では、「まともでない精神の持ち主」が読んだらどうなるのであろうか(この作品をある程度理解できるという前提で)。彼は、堕落した人間性を突きつけられ、そこに苦痛を見出し、絶望するのではないだろうか。また、あるものは、その堕落した人間性に何かしらの共感を得て、自虐的ともいえる快楽を得るのではないか、と思う。

破壊的だ。
私小説:思想小説 ★★★★★
これは自虐道化的で苦しい作品だ。同時に《思想的》な意味で随分深い。
(実はこの小説、引用したい言葉がたくさんある"口語的名言"の宝庫でもある。)
個人的な感想は、感動や興奮の類は他のドスト氏の作品ほど湧き上がらない。
ひたすら、突発的・散発的な書き殴りの中に、恐ろしいほどの、人間の性の本質や、
その本質ゆえに苦しめられた著者の無限連鎖的な思考・感情の闇が克明に浮かんでいる。
ドストエフスキーの私小説という形と取った思想小説とも言える。実は主人公の道化ぶりは笑うに笑えないが"腹筋"肉痛ものです。
この手の自意識に苦しめられている人や苦しめられた人は意外と多いはずです。
笑い飛ばせないほど、実は悲劇的(喜劇的)なんです。
難解そうな思考の中に、驚くほど複雑な神経から生み出された深い世界観が見え隠れする。
19世紀のひきこもり文学 ★★★★★
地下室にこもった男がぶちまける手記という形をとった、19世紀のひきこもり文学。

ドストを読んでいていつも驚くのは、この弁舌、人の心の描き方。
ここまで激烈でなくても、主人公のような心情におちいったことのある人間は、けっして少なくないだろう。
ニーチェや太宰と同じ系統の、非常に感染力の高い本だと思う。

主人公ネクラーソフ(名前までが冗談めいている)は、激烈な自尊心と、同じくらい激しい自己卑下の心を持ち、世界と相容れない理由を必死に弁明しようとする。
世界が悪いのか、自分が悪いのか、それともどちらでもないのか。
この、誰でも一度はぶつかる壁に、本書はひとつの思考の結末を提示している。
世界は悪い、自分も醜悪、だからひきこもる。

人間は矛盾に満ちている、という話。
2+2=4の世界に怒りをぶつけ、醜悪さを露呈したがるその心。

「自分が茶を飲めるならば、世界など破滅してもかまわない」という、ある意味極論の名言が印象的な本。
ドストの作品の転換点と言われる本書は、ドストの歴史の中の位置づけから見てもおもしろいが、単体のひきこもり文学としても、じゅうぶんに読む価値がある。
面白すぎる!! ★★★★★
「ぼくは病んだ人間だ・・・」
出だしから、もうマイナスパワー全開です。

前半独白
中盤コメディ
後半ホラー

って感じでした。
特に中盤の主人公のへたれっぷりには
声出して笑ってしまいました。