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兵士に告ぐ (小学館文庫)

価格: ¥690
カテゴリ: 文庫
ブランド: 小学館
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番号が無い普通科連隊は、言葉とは裏腹に普通でない ★★★★☆
 杉山隆男氏の兵士シリーズ第4弾である。今回は陸上自衛隊に焦点を当てている。九州に近年設立された西部方面普通科連隊(西普連)の取材をメインに、北海道倶知安(くっちゃん)の第29普通科連隊廃止について、自衛隊が内包する悩みと将来について濃密なルポタージュとなっている。

 西普連は、極東アジアの侵略国が九州・沖縄の離島を狙っていることに対して近年設立された部隊である。自衛隊の部隊とは、通常は番号が振られているものである(ちなみに普通科とは戦後のケンポーと左翼への対策として軍隊をイメージさせないために造られたコトバで、歩兵のことである)。ところが西普連は、自衛隊の精鋭を集め、番号を振らずに設立された部隊である。しかも通常は連隊はどこかの師団・旅団に属するものであるが、西普連の上位部隊はなく、西部方面隊の直属部隊である。これは師団が担当する区域に関係なく、九州・沖縄すべてに対応するということを意味している。

 番号が無い普通科は、言葉とは裏腹に普通でない。この部隊が数年前にアメリカに渡り、米海兵隊からボートで島に上陸する訓練を受けたニュースをご記憶の方がいらっしゃるだろうか。専守防衛(=民間人に相当な犠牲が出ると思われる本土決戦を意味する。)を旨とする陸上自衛隊では、まず日本本土が攻められてから、敵を阻止したり、占領された地を奪い返したりする訓練がばかりやっていたのだ。しかし、夜間に海を渡って離島に上陸する訓練はしたことが無い。存在してあたり前の部隊や訓練が自衛隊に50年以上無かった不自然さを憂うところ大である。

 その他、自衛隊のジレンマ(自らを否定するケンポーを遵守している件)や、社会のはみ出しものがいる一方で、高学歴の兵隊が増えて高卒の上官が扱いに困る現状などの悩みなども紹介している。
 自衛隊員が決して戦争を望む好戦的な軍国主義者ではなく、戦後民主主義を良く実践してきた故にジレンマに陥る日本社会のまさに縮図であることが良く分かる本である。
広報の意味では、現場の息遣いが伝わる最高の文章 ★★★★☆
 兵士シリーズは4冊とも読んでいます。
 さすがに15年も続けているだけあって、かつての取材対象が昇進したり別部署にいるなどし、“点”が“線”になり、深みが出ている。
 国民に自衛隊を広く理解してもらう意味では、感情移入もしやすく、読み物としても楽しめる。 が、裏を返せば、15年間もタブーに触れていないからこそ、内部取材を続けてこられたのだと読者は理解した上で読まねばならない。

 潜水艦内の薬物蔓延、米がF−22を売ってくれなくなったウイニーや中国人妻などの情報管理の甘さ、現場での裏金作り、国民平均の倍にもなる自殺率の高さの背景(いじめ問題なども)・米ですら行うようになったイラク帰還兵に対する放射能被爆検査(薬物の尿検査は実施したが)すら行わない(劣化ウラン弾放射能被爆を、明らかにはできないだろうが)、これらが起こりうる現場のクウキを、筆者が感じないわけはないし、感じなければ物書きとして失格だろうが、これらには触れられることはない。

 統合幕僚会議長であった栗栖 弘臣が『日本国防軍を創設せよ』で「国民の生命、身体、財産を守るのは警察の使命であって、武装集団たる自衛隊の任務ではない。自衛隊は国の独立と平和を守る」書き、本書でも、自衛隊を中枢から動かしている40代の参謀たちも「国民の生命と財産を守るだけなら警察と変わりない」とはっきりと口に出しているとあるが、現場の中隊長は、「国民とこの国を守る身分や責任を感じて、わが身の危険を顧みずこの仕事についているのです」と答える。
 制服組と現場に、齟齬があるとは思えないだろうか?
 1988.7,26美智子妃殿下の警備現場へ移動中の警官20人が、溺れる小学1年生を見殺しした事件同様、有事の際には、国民より国を守る方が重要とされ、それに現場も従わざるを得ないのではないか?との不安を持った。
過去3冊に比べて焦点がぼやけています ★★★★☆
シリーズの過去3冊は読んでいます。4冊目である本書は、焦点がぼやけており、過去3冊に比べて読みにくいと思いました。たとえば読んでいると、現在取材をしている部隊から、場所も時間も飛び越えたエピソードを紹介し、またもとに戻るといった具合の繰り返しです。雑誌の連載から単行本化したからなのでしょうか。

しかしながら、自衛隊員の生の声が取材できているのは過去同様著者ならではあり、基調なルポだと思います。