フリッパーズギターの続き
★★★★★
このCDが発売された当時は良さが良く解らなかった。
あまりに音数の少ないソリッドでモダンソウルなサウンドが、
あまりにサンプリングに覆われたフリッパーズのラストアルバム「ヘッド博士の世界塔」のサウンドとかけ離れていたから。
当時小山田圭吾氏は「天気読み」を評して「尾崎みたい」と発言していた。
でも今聴くとある意味コーネリアスのFIRST QUESTION AWARDよりもフリッパーズ「らしさ」を感じる。
それはやっぱり「歌詞」なのかな?
背景のサウンドがギターポップでも、ピコピコの打ち込みでも、ペットサウンズでも、モダンソウルでも、ジャズでも、筒美京平氏でも、オーケストラでもエレクトロニカでも、やはり小沢健二の書く歌詞こそが素晴らしい。
フリッパーズっぽい芸風のバンドがいくつかあったけれど、決定的に違うのが歌詞だったのかな。
コーネリアスのファンタズマやポイント、あれらのアルバムも良かったけれど、どうしても歌詞に物足りなさを感じてしまう。
旅はここから始まる
★★★★☆
フリッパーズ解散後、「最初に動くのは小沢か?小山田か?」と、ドキドキしながら
待ってましたが、'93年、先陣を切ったのはオザケンでした。
一聴して、フリッパーズとは一線を画すジャジーな編曲にも驚きましたが、何よりも
びっくりしたのは歌詞!
『ありとあらゆる種類の言葉を知って何も言えなくなるなんて、そんなバカな過ちは
しないのさ』(ローラースケート・パーク)
『もう、間違いが無いことや、隙を見せないやりとりには嫌気がさしちまった』
(カウボーイ疾走)
等、それまでのクールで斜に構えた自己イメージを真っ向否定する言葉の数々に、
「えーっ?!・・・でも、カッコいい・・・」と、またもや感化されてしまった記憶が。。
名曲とされる「天使たちのシーン」で有名なアルバムではありますが、多くの曲は
上記に代表されるように、硬派な「オトコ」のカッコ良さがテーマです。
しかし一方で、テーマとは矛盾するように、ひとを煙に巻く過剰なレトリック等、
オザケン印の「自意識」があちこち散見されるのも事実。
もしかしたら、本人的にも中途半端さを感じたのかもしれません。
翌年発表の『LIFE』で、全ての自意識を捨てさった(あるいは全面肯定した)かの
ような、振りきれたポップスに突き進んでいったのも、このアルバムの反省を踏ま
えて、だったのでは?
地上の夜…
★★★★★
ほんとにかっこいいです…この曲を深夜にラジオで聴いてアルバム買いました。
ラブリーとか聴いた後に聴いたから意外でした。ほんとにこの人のアルバムごとの変わり様は毎回おもしろ過ぎです(笑)
行き詰まった小沢健二の出した答え
★★★★★
これ辺りを期に小沢健二はメディアから姿を消す
小沢さんも今作は「本気」で書いたような曲が多く、聞くこちら側も
その詩に聞き入ってしまう。
人生観が垣間見える良作、メロディも素晴らしい
東大卒がつむぎ出す詩的ソウル
★★★★★
音の構成は極めてシンプルです。ただ、ベースとドラムの音が強く、これはきっとオザワ君自身が一番こだわった部分だったと想像します。なぜか? このアルバムは、文学青年(それも英米文学をかじった)が、ソウルミュージックのメッセージの「濃さ」や「熱さ」に惹かれ、音としても何とかそれに肉薄しようとしているからです。一方、詞は限りなく詩的な文学性にあふれていますが、彼の語る情景は、何でもない日常に新しい意味を見出す感動に支配されています。中でも圧巻なのは後半の「天使たちのシーン」。13分におよぶ大作ですが、冗漫な印象はなく、何か啓示でも受けたかのように畳みかけるメッセージが印象的です。唐突ですが、離婚や、愛する人との死別、あるいは人生の長い冬から抜け出そうとしている方に、このアルバムをお勧めします。「神様を信じる強さを僕に/生きることを諦めてしまわぬように」。この後のアルバム「LIFE」で、おちゃらけキャラを身につける前、彼はこのアルバムでこう言っていました。歌は決して上手くなく、時折曲の中でものすごく頼りなげなビブラートを発しているけれど、でもそれが、東大文卒が人生である転機を迎え、つむぎ出したソウルなのです。メインストリームに引きずり出したい名盤です。
※ちなみにこのアルバム、初版時は「犬は吠えるがキャラバンは進む」('93)という名でリリースされていましたが、一度廃盤となり改題され、現在はこの「Dogs」という名で発売されています。