冒頭のアンダンテから、ゆとりを持ちながらもピアニスティックな雰囲気を存分に漂わせる。
10のバガデルはカプースチンの作品の中でも比較的早くに浸透した作品。
もともと「バガデル」という古典的な言葉は、“ちょっとした軽いもの”といった意味だが、
ここでの軽妙な表現はたしかにバガデル的で魅力たっぷりの小品が続く。
第5曲、Largoのムーディーな色合い、続くComodoの軽やかなリズムなど、カプースチンのエッセンスが短いながらも凝集されている。
ソナタでは第6番は特に充実した作品と言える。
特に第1楽章の小気味の良いモチーフの連続は聴けば聴くほどに心地よく、鮮やかな変化を続けてくれる。
またソナタ第4番の第2楽章は特有の間合い、吹き抜けるような行間の趣きが忘れがたい。
全篇に聴き手を裏切らないカプースチンならではのモード・ジャズ的な即興性を存分に楽しめる。