人間椅子には駄作らしい駄作はなく、常に一定の水準を保っている。
保ってはいるのだが、本作に限っては、リリース当初も感じた違和感をいまだに感じてしまう。


それは、和嶋慎治の作風の変質によるところが大きい。
そもそもは、メジャー復帰した『二十世紀葬送曲』収録の「恋は三角木馬の上で」に始まるんだろうが、
和嶋氏のどこか躁病的にも感じる明るさが本作では特に暴発していて、
それまでの重厚長大なヘヴィ・ロック・バンドとしての人間椅子らしさが大きくぼかされているのだ。
「さよならの向こう側」「エデンの少女」は、その最たるところだろうが、
特に「エデンの少女」の往年のアリスを思わせる「フゥ〜ッ」という掛け合い（？）は度肝を抜かれたし、
何の変哲もないブルーズ・ロック「悪魔大いに笑う」も、人間椅子にしちゃあ食い足りなさすぎる。
全体として、バンド…というか、それらの作曲を手がける和嶋慎治の気の迷いが伝わってくるのである。
もしかしたら、人間椅子というバンドの殻を破りたかった…のか。
（和嶋氏が宇宙人の格好をしていたのも、この時期だ）



和嶋慎治は、近年、ある時期にとても精神的に参っていたということを告白しているが、
音楽的にとても散漫（言い換えれば、実験的）な本作の内容と、
プライヴェートの出来事を捻りもなく詩にしたためた「甘い言葉　悪い仲間」などを聴くと
まさに、その感情がダイレクトに出てしまっていたのが本作なんじゃないかと想像するが、どうだろう。

いずれにせよ、そのキャリアの中でも特に興味深い迷作である。

　一曲目の死神の饗宴から最高です。
超絶テクニックは相変わらず凄まじく
ヘビーで大好きです。そんな中にも
このころからキャッチーな感じの曲も
はさまれてますので聴きやすいです。
完成度の高さではオリジナルアルバム中
随一だと思います。

　インディーズ落ちの時、「本当にやりたいことしかやらない」と宣言した彼ら。しかし一方で、人間椅子サウンドに対する遠慮もあったのでしょう。重々しくなければならない、陰鬱でなければならない、古典文学的でなければならない……。少しずつではあれ、確かにそうしたイメージへの挑戦は、インディーズ落ちした辺りから始まっていました。しかし、今いる世界から飛び出るほどの、思い切ったことはやりませんでした。
　さて、本作のタイトル「見知らぬ世界」です。まあ、「見知らぬ世界」というほどらしくない音だとは私は思いませんけど、それでも今回「重々しくあれ」「陰鬱であれ」「古典文学的であれ」に対して、その全てを放棄したような曲が見られるようになりました。"さよならの向こう側"のさわやかさは、長いトンネルを抜けたような気分になります。しかしアルバムのベストトラックは放棄ではなく融合の作品でした。"涅槃桜"、俯き気味に夜の世界をふわふわと歩くようなこの名曲は、しかしどこか恍惚としたものを感じさせてくれます。この恍惚に潜む狂気に気づいた時、あなたはもう人間椅子地獄にどっぷりとつかり、逃げ出せなくなっているはずです。

典型的人間椅子節を炸裂させつつ、新規軸も披露する人間椅子の新たな世界。賛否は別れたが私は賛同したい!散漫だとか言う意見もあるがなかなかに良い!とにかく曲が良いね!リフにメロディーに、そして鈴木氏、和嶋氏の唯一無二のウ゛ォーカル!上手さよりやはり個性である!死ぬまで人間椅子を応援したい!行け!血塗られた道を・・・

まず《人食い戦車》での直球っぷりに当惑しつつも感激。かっこいいです。。。和嶋さんのポジティヴ楽曲にも最初は戸惑いますが、《エデンの少女》は素直に名曲といえますな。キャッチーな曲の多いこのアルバムのなかでも特にそれが際立っているのは《悪魔大いに笑う》ですかね?《侵略者》は一昔前のジュブナイル小説のようは歌詞が面白い。佳作の多い名盤といえるでしょう。