黒パンツの君
★★★★☆
このアルバムを聞くといつも自分のいる時空間から隔離されるような奇妙な感を覚える。リリース後四半世紀も経っているのに機能する
TimelessPunkである事の証明だ。マスの支持を取り付ける前の彼の不機嫌さと怒りも伝わってくる。でも彼の事だから産み落とす楽曲はどれも素晴らしい。
表題曲はテクスチャに不釣合いなカッティングが「カテゴライズ逝ってヨシ」と聴き手に宣言しているようだ。怒涛の「2.Sexuality] これは「格好いい!」以外の言葉がみつからない。
今やスタンダードの[3]に続いての[4.Private Joy]これほどのCandyPopがどこにあろうか。
メロウが2曲あるが基本的に姿勢はパンクロッカーだ。モードに多大な影響を残して彼はこの後いよいよグラムに手を出して見事に結実させる。
80年代のPrinceの時代へ突入する兆候
★★★★★
前作"Dirty Mind"はデモ音源をそのまま発表したという形であった為、チープでスカスカな音が目立ったが、新たなPrinceの戦略のスタートと言っても良い、前衛的な作品であったように思う。そしてその1年後発売されたこの"Controversy"はその路線を引き継ぎ、音源はかなりのクオリティをストイックに突き詰めた名盤であるように僕は思う。だが、その後"1999"、"Purple Rain"、"Around The World"、"Parade"、"Sign "O" The Times"というヒット作を詰め込んだ名盤が立て続けに発売される為に、このアルバムの印象はとてもPrinceの歴史の中でも若干薄まってしまったように思う。だが、以後のその名盤たちと比べても遜色ない位の出来であるように思う。
1曲目に収録され、タイトルソングともなった"Controversy"を聴けば解るが、何よりもサウンド自身の造りが繊細かつストイックで、ギターの細かいリフとシンセによって構成されたタイトな音を綿密に組み立てていく部分は、あのFunkの父でもあるJames Brownの行った作業の80年代的なアプローチであるようにも感じてしまう。ここら辺は後の"Sign "O" The Times"に繋がるといった部分でもあるように思うが、その他は"1999"、"Purple Rain"のようなロック寄りのポップサウンドで厚みのある深いアレンジが展開されている。聴けば聴くほど味がある面白い作品であるように思う。
前作は歌詞にあけっぴろげに性愛路線を強調してみたものの、本作はその路線を引き継いだ上に、政治的な主張が大きい"Ronnie, Talk To Russia"や暗い事件をテーマとして語られる"Annie Christian"等、充分に時代に挑戦的な姿勢を持ちつつ制作されているのも一つの特徴であるように思う。