労働市場に新自由主義による改革など起こっていない
★★★☆☆
共産党系機関誌の編集長をしている著者はがちがちのマルクス主義者です。根本的に間違えていると思ったのは「新自由主義による小泉改革が労働市場を歪め、格差社会を招いた」という記述です。まず労働市場において雇用の流動化が起きたのは非正規社員のみであり、正規社員には雇用の流動化はほとんど起こっていない。それは大企業の終身雇用を守れなくなったにもかかわらず、がちがちの解雇規制を緩和させなかったことにより起きているのである。格差社会は年功序列賃金により、正規と非正規の身分格差が作られ賃金体系のがちがちの規制が守られていることの結果であり、それが新自由主義によるものだという主張は甚だ本質を取り違えているように思う。
ただハイエク、フリードマンなどの代表的な論客や経済学史全般にも言及しているのでマルクス主義者の視点からの新自由主義者、経済学史がどのように見えているかを知っておくにはいいと思います。