読んでいてこんなに楽しいのは、きっと有名作家の娘で女優というステータスにも関わらず、気取らずに日常のドタバタを紹介してくれるからでしょう。マチャミ(久本雅美)の「私、女優よ!」というセリフと逆の雰囲気ですね。
私が特に「いい!」と思ったのは、「私はこんなにドジなの」とは言っても、「私はこんなに庶民的なの」とは言わないところです。逆上して大切なスカートに穴を開けてしまった失敗談のマクラには、「その夜の私は逆上からはるか遠いところにいた。オペラ、美しい夜景の見えるレストラン、極上のワイン……」と、セレブな生活の片鱗をのぞかせています。
また、撮影の都合でホテルを予約する時に「いちばん安いお部屋は? と訊けるほど、私の心は庶民的ではない」とか、一泊4万5千円という値段を知って「今さら、そんなに高いんならやめます、とも言えない」と、セレブに成りきれないやせ我慢を覗かせています。
世の中には「金持ちで何が悪いの!」という人や、逆に自分が金持ちであることを隠す人がいます。私は、両方とも好きではありません。壇ふみは、この中間にいるようで、とてもいい味を出しています。
本書は日経流通新聞に月に一度連載している「ありがとうございません」というコラム約6年分に加筆修正したもの。新聞連載タイトルも著者のあわて者ぶりを象徴していて、お礼を言っているうちになぜかお詫びになってしまい、「ありがとう」+「すみません」=「ありがとうございません」と言ってしまうとのこと。
本書のタイトル「どうもいたしません」も、「どういたしまして」が「ありがとうございません」的な変化をした言葉です。
こんなに楽しい本を読ませていただいて、「ありがとうございません」でした。
遅刻のこと、なんだか夜更かしするはめになってしまうこと、毎度のことながらパソコンに関するエピソード。
これ、切実なんですよね。私もこうして、ネットの世界に遊ばせて戴いていますけれど、本当に、ここをこう押せばこうなるはず!という、覚えている範囲のことしかできませんもの。うっわ消えた??!うっわ動いた??!あっれぇ~??!保存できてなかったの~??!なんて、過去限りなくありましたもん。ふみさん、同志はここにも居ります……。
のろいとか遅いとか、事例がいっぱい出てくるのですけれど、ふみさんワールドの温かさは、そこにこそあるのですから。
妖艶で壮絶、私生活を隠匿する女優さんより、気さくに自分を語り、思いを語って、なお、知性と好奇心と自省の念を隠さない“檀ふみ”さんが好きです。
「ありがとうございません」続編といったところで、最近のふみさんの色々が書かれてある。才色兼備の鏡ともいえるふみさんの相変わらずのドジぶり(ごめんなさい)に共感を覚え、出先での面白おかしいエピソードに爆笑し、あの!愛犬バジルも健在!!そこに楽しい甥っ子さんまで登場!!!沢山のドジのがげに、何とも言えない、ふみさんらしい優雅さを感じるのは、私だけかしら?!遠いところにいるふみさんが、とっても近く感じる1冊です。