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裁判員の教科書

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: ミネルヴァ書房
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裁判員制度のもとで裁かれてしまう可能性の怖さについて思いが至る書 ★★★★★
 いよいよ始まった裁判員制度。いつなんどき自分にもお声がかかるか知れないと思い、タイトルにひかれて勉強してみることにしました。
 いやぁ、実に面白かった。そして同時に裁判員になることのむずかしさや怖さについても痛感させられました。

 本書を繰りながら私は、市井の人間(平たくいえば、法律や裁判のズブの素人)である自分の浅はかな思い込みを次々と覆されていくのを感じました。
 たとえば、本書には次のようなことが書かれているのです。

刑事裁判で裁かれるのは検察官である。
(私:えっ、裁判って被告人を裁くんじゃないの?)

裁判では被害者やその遺族が訴える悲しみの声は無視すべき。
(私:被告を厳しく処罰してほしいという感情は人間的なものでは?)

証拠を映像でみせるやり方はあるべき裁判の進め方から大きく逸脱している。
(私:でも写真や映像があれば素人の裁判員にも事件の全容が理解し易くてよいのでは?)

 著者がなぜこれほどまでに一種挑発的に聞こえることを書くのか。本書に書かれたその理由を読んで私は大いにうなずいたのです。詳細は本書にあたってもらうとして、ここで言えるのは、裁判員制度が私の思っているような「映像を使って素人の裁判員にも理解しやすい形で進め、プロの裁判官と違って普通の人として被害者や遺族の気持ちにも理解を示しながら、被告人を裁いていく新しい制度」であってはならないことが良くわかります。

 自分がひとつ成長した気分になれる、大変素晴らしい読書体験でした。
 そしてさらに言うならば、いつなんどき冤罪に巻き込まれるやもしれない危うさをもった国・日本に暮らすということは、この本を読まずに強い思い込みを持ったままの裁判員たちに感情的に裁かれてしまう可能性を常に抱えていることになるんだということに思いが至ります。
 そう考えると、やはり裁判員制度は私にとってどこか怖くて賛成しかねるもののままでしかないのです。
裁判員制度と不安な参加者の溝を埋めてくれる書。 ★★★★★
選ばれたら逃げずに裁判員の務めを果たしたいが、人を裁けるか、死刑を言い渡せるか、負担が重いが・・、こう感ずる国民は多いはずだ。国民の義務として真面目に取り組もうという読者が、制度と自分の考えの間の溝が埋まらない場合に、本書は的確にその溝を埋めてくれる。裁判員の務めは、(1)裁判員は市民の良識や常識を持っているので、裁判官を刺激し法律と実生活とのギャップがないように協働すること。(2)裁判員が裁くのは「犯人」ではなく、検察官が被告人の有罪を立証し、裁判員は全神経を集中して法廷で「検察官」をチェックすること。立証のポイントを押え、証拠集めが適法な手続きか、証拠から犯罪が再構築され被告の有罪がきちんと証明されているかを見るのが裁判員の仕事だ。つまり検察官の100%立証なら被告人はクロ、検察官の立証が不十分ならシロになる。取り逃がしより冤罪を回避する為だ。これまで立法・司法・行政の中で司法だけが国民の参加がない。せいぜい最高裁判事の国民審査だ。見切り発車の裁判員制度も、「判り易く、速やかに、ルール通り」に出来ることが期待だ。法教育になり、自分が法の主役だと認識し裁判に参加することも期待だ。犯罪が益々凶悪化している現況下、判例は重視するが最近の傾向を鑑み厳罰化はやむを得ないと思う。よく「死刑廃止論者だ、死刑判決は出したくない」との意見を聞くが、刑法に規定がある限り適用せねばならず、死刑判決を出すのに躊躇してはいけないだろう。もし苦役と考えるなら、裁判員のトラウマの心配よりも、死刑反対の主張をし刑法から削除する運動が先であると説く。斯様なことも書いてあり、他の裁判員制度解説本と大きく違う点である。私も有事には本書をもう一度読んで、裁判員席に臨みたい。