「完結出生児数」
★★★☆☆
勉強している人は多いのに、素人目には、なかなか経済学のようにメジャーになれない「社会学」の啓蒙書。対談しているお2人も、19世紀に端を発する社会学のさまざまな論者の言説をきちんと調べ、それを分かりやすく解説されているのに、結局まとまりなく話は終わっている。評者は赤鉛筆をもって本書を読了したが、唯一感心したのは、菅野さんの「完結出生児数」についての指摘。1.5を切って問題視されることが多いまま独り歩きする「合計特殊出生率」に対し、「ほぼ子どもを生み終えた結婚持続期間15〜19年の平均出生子ども数」を指す「完結出生児数」は今も2.0を割り込んでいない、というもので、少子化といえば合計特殊出生率が例示されるなか、この指摘は相当に新鮮だと思う。
お友達同士の狎れ合い
★★☆☆☆
哲学者の西研と社会学者菅野仁による、対談形式の社会学の入門書。
ウェーバーやデュルケムらが何故新しい学問である「社会学」を創設しなければならなかったのか、その動機を探ることで二人は、我々読者を社会学の世界へと案内する。そしてこのいわば「社会学の初心」ともいうべき地点から現代の社会学の潮流を批判するのである。本書はだから、極めてユニークな入門書である。
本書では、いくつか興味深い話も聞くことが出来たのだが、西研が明らかに勉強不足だったのは残念。西はたとえば、ウェーバーの「鉄の檻」などを持ち出すのだが、それについての理解が生半可なものなので議論がひろがっていかなかった。このような対談の前には『プロ倫』の本文ぐらいは読み直して来いと言いたい。菅野も遠慮なくその点を批判すればよいのだが、いかんせん、この二人は「お友達」との由。嗚呼!