インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

男の子のための軍隊学習のススメ (ちくまプリマー新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
Amazon.co.jpで確認
皆さん★は渋めですね。 ★★★★☆
 本書について「はじめに」に、「『戦争は二度と起こしてはいけないと思いマース』といった内容を直接的に主張することもしません。この件については、『ちくまプリマー新書』のライバルである(らしい)ジュニア向けの新書にお任せいたします」(p13)と書かれている。
 こういう文章は「立派な良識ある大人(特に男性)」には書けない、と私は思う。「マース」という語尾に籠められた嘲弄性。そしてその嘲弄を、ほとんど名指しで「岩波ジュニア新書」に向ける小生意気さ。他方で著者は「ちくまプリマー新書」に対しても、その想定読者層への世間一般的な配慮を随処で踏みにじることによって、おそらく編集者をハラハラさせたと推測される。
 著者は自分が軍隊体験記や戦争中の回想録を好んで読むのは「魂の試される時」、つまり「自分の卑しさとか狡さとかがモロに出てしまったというような、イヤーな体験の思い出」が溢れているからで、「その悔恨の場に立ち会うとき、人間も捨てたものではないという思い」に満たされるのだと言う(p51)。この「魂の試される時」に焦点を当てようとして著者が発見したのが、おそらく上記のような文体だったのだろう。著者は意識的にか直感的にかそうしたflippantな文体を選ぶことで、良識ある大人(特に男性)たちが作り上げる社会の「いやったらしさ」を、それこそ「いやったらしく」炙り出そうとしている。
 (ところでこの「いやったらしい」は著者の愛用する形容詞だが、辞書には載っていない。ググれば岡本太郎や村上春樹の用例が簡単に見つかるが、どうも意味には相当のブレがある。この点は検討の余地があると思う)
 しかしp53の「『自分の職業の弱さ』(ギクッ!)」という自分ツッコミにも見られるように、この著者は女性でありつつ(……失礼!)、自分が「立派な良識ある大人(特に男性)」の一員でもあることを十分自覚しており、そのflippancyは一種の自虐でもある。だとすれば本書最終章で語られる軍隊内の「稚児」とは、ある意味著者自身ではないか。そういう複雑に折り重なった自分語りが、本書の弱さなのではないかと私は感じる(ギクッ!)。
『グロテスクな教養』の作者の本 ★★★☆☆
今夏に公開された押井守のアニメ映画『スカイ・クロラ』は、戦争がテーマである。大空を華
麗に舞う戦闘機たちの映像は、言葉なく「か、かっちょいい・・・」と見とれてしまうばかりだ
った。押井はこの作品で描く戦争は、他の戦争を扱った作品と同様に「かっこいい戦争」だっ
た。しかし実際のところどうだったのだろう、戦争ってやつは。

戦争に参加したというのは、日本ではいつしか戦地において悲惨な体験をしたということを指
すようになった。しかし、本当のところはもっと身近で、もっと些細なところに、つまり戦地
でもなんでもないところに、戦争の悲惨さは口を開いていたのではないか。

高田里惠子『男の子のための軍隊学習のススメ』は、徴兵された男子たちが軍隊の中でどのよ
うな出来事に直面し、どのような思いを抱いたかということを、小説、体験記などに通して明
かにする。そこに書かれているのは、敵国に対する憎しみや、愛国心などといった、スケール
の大きなことばかりではない。いかに徴兵を免れるかという姑息な工作や、年令と階級のやや
こしい交錯、上官との軋轢、イジメ等々。これを読むと分かるのは、少なくとも証言している
人たちにとって戦争とは、『男たちの大和』どころの騒ぎではなかったのである。

そんな中でも、当時の青年たちにとって最も衝撃的で、最も屈辱的だったのは、おそらく肛門
の検査だったのだろう。よく自分の恥部を他人に見られたときに使う表現に「肛門を見られる
ような恥ずかしさ」というのがあるが、それほどまでにアナルとは男にとって(もちろん女性
にとっても)デリケートでアンタッチャブルな箇所なのである。いくら健康診断とはいえ、四
つんばいになって菊門を人にさらけ出すというのは、正気の沙汰ではない。
 変な話、肛門検査から逆算すれば、戦死してしまえば恥も掻き捨てということになる。反対
に生き残ってしまったらば、死ぬまで肛門をさらけ出した恥ずかしさを抱えて生きることにな
る。

しかしどうだろう。戦争について語られる言説の中心は相も変わらず、空襲がどうだったとか、
何人死んだということであって、決して肛門検査ではない。何度も言うようだけど、人にケツ
の穴を見られたことのショックというのはなかなか消える類のものではないはずなのに。

フロイトによればトラウマは語り得ない。だからこそ、日本兵たちにとって真のトラウマとは、
あまりに語られすぎている戦争や敗戦という事実ではなく、実は入隊時に受けた肛門検査だった
のかもしれない。だからこそほとんどの人はそれについて語らない。「個人的なことは政治的
なこと」というのはフェミニストの標語であるが、男にだってそうなるときはある。肛門検査
を受けたという個人的経験が、国家規模で背負い込むことになったトラウマと直結していると
いう可能性だって捨てきれない。
戦争に勝っても負けても、肛門検査はある。
そういった意味でも戦争は本当に悲惨なのである。
軍隊小説読書の手引きにいい! ★★★★☆
著者と同じく
日本の軍隊小説や回想記を読むのが好きな私。
なかなか日常生活にはない必死のドラマや考察に
惹かれていたんですね。
でもしょっちゅう混乱するのが
旧日本軍の階級や軍歴が持つイメージ。
たとえば「陸士上がりのパリパリ」とか
「幹候に受かっって」
なんとなくの理解で
あやふやなまま読んできました。
この本を読んで
当時の男の人たちは
そんなこともパッと聞いただけで学歴や出自
年恰好や風貌まで想像してしまえたろうことが
とってもナットクできました。。
読者を少年に想定しての語り口には
ちょっとイタイとこもあるけど(それも計算ずくか)
とても興味深くタメになる本でした。
ま、色々わかったとこで俘虜記でもまた読むか。
私の愛する大岡昇平。
かれがどんなに変り種の「老」兵士だったか
今更よ〜くわかりました!

「軍隊小説を読むための基礎講座」 ★★★☆☆
いわゆる軍隊小説(戦争小説)を読むためのガイドとして好適。巻末の文献一覧も、差し当たりの基本書が網羅されていて使いやすい。日本の軍隊がもっていた独特の陰湿さや軍人層とインテリ層の途絶した有り様、複雑な階級・昇進制度、兵士が直面した孤独感や寂寥感などが、ひとわたり剔抉されている。ただ、個人的には、著者の明るくカラッとした叙述の仕方は、ややテーマとはそぐわないような気もした。なお、あの三島由紀夫が徴兵忌避者であった(130頁)というのを、私は本書で初めて知った。
桃山学院大学って面白い女性の先生がたくさんいるんですね ★★★☆☆
同じ著者により先月出版された作品(学歴、階級、軍隊)の結語を引く作品なのでしょうか。その作品に結語として挙げられていた「異質なものとの接触」は著者なりの若者への曖昧なメッセージなのでしょうと思っていたのですが、実はこの作品が答えだったのです。手が込んでます。そしてこの作品の媒体は「ちくまプリマー新書」という若者向けの読みやすい新書というわけです。取り上げられているテーマは前作と大幅に重なります。しいて違いを挙げるとこの作品はいまや読まれることのなくなった数多の「軍隊小説」への解読書となっている点です。異質なものとの接触の事例として、軍隊を取り上げるとは、たしかに慧眼ですが、そこには時代の流れが感じられます。そしてこの作品が終戦記念日を意識して出版されている点も。たしかに現代の若者にとっては、軍隊以上の異質な存在はないわけですから。しかしながら、著者がこの軍隊を通して描こうとするのは、現代日本と変わらぬ悩みと生きにくさ、そして「日本社会のいやらしさ」を抱えた社会の縮図です。その中でも、軍人が決してインテリに尊敬されることのなかった日本の近代化の文脈の中での志願と徴兵の微妙な差異を逆説的に取り扱った第三章は、陰影に富んだ部分です。みんな先の見えない中でリスクをとった計算をしていたのが日本の帝大生だったというわけです。最後の「軍隊と裸体のあいだ」は、またまたわかりにくい部分ですが、またこれも次の作品へのヒントなのでしょうか。