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エル・シードの歌 (岩波文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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英雄叙「事」詩 ★★★★★
フランスでは『ローランの歌』、ドイツは『ニーベルンゲンの歌』、イギリスだと『アーサー王』といった英雄伝説が有名です。
スペインの代表的英雄武勲詩が本書『エル・シードの歌』ということになるでしょう。
文庫本としては、ほんのちょっと厚めだけど読み易いです。

英雄伝説と言っても完全なフィクションとは限らず、例えば『ローランの歌』にしても史実を題材にしています。もちろんかなり脚色されてはいるのですが。
本作もまた、レコンキスタ期イベリア半島の史実を素にした作品だそうです。そして詳細な註釈から読み取れるように、かなり生々しく現実的な中世世界を描いているようです。
現実路線だとどうしても主人公の活躍が地味になりがちなのですが、本作では実在人物でもあるエル・シードがかっこよく、それでいて人間的に描写されています。
当然脚色もあるのでしょうが、作中に鮮やかに描かれているエル・シードの獅子奮迅の活躍は、国土を回復しつつある当時のスペインの勢いを巧みに表現しているのかもしれません。
リアルな物語 ★★★★★
中世スペインの武勲詩、わがシッドの歌。
週刊朝日百科「世界の文学」でその存在を知り、中世文学専攻だから
何となく読んでみようかな、という気持ちで手に取った。
実際に読んでみると、思ったよりも面白かった。
王の側近の策謀で国外追放となったシード。国を出て南下しながら、
イスラム教徒を打ち破りまくり、富を増やし、やがてバレンシアへ。
やがて王に赦されたシードは娘を公子兄弟にやることになるが・・・
というお話だ。
中世のこの手のものとしては、比較的リアルなところが新鮮だ。ロマンス
だと、ファンタジー性も強かったりするし、武勲詩では、戦いでひとりで
何百人討ったとか、誇張がすごい。しかしこの物語は、誇張も少なく、
魔法のようなものもなく、歴史物語のようである。じっさい、シードは
実在の人間であり、この物語は史実をベースにしているのだが。
戦いも、誉を得るためというより、生活のため。娘たちが高い身分の兄弟に
嫁ぐことになっても、父が「どうも気が進まないなあ」といってみたり、
金貸しをだまして軍資金を調達したりと、現実的なところが随所にみら
れる。
そして、シードは王のように威厳があり、つき従う者たちも強くてひたすら
かっこいい。
訳も読みやすくおもしろい。
巻末の注は、それだけで薄い本一冊分ぐらいあり、校訂上の問題から中世の
文化、そして史実との相違に関するまで、非常にくわしく勉強になる。
込み入った筋ではないので、いちいち注を参照しながらでも、本文を
追ってゆける。
スペイン武勲詩に触れる手軽な一冊 ★★★★☆
外国文学のジャンルの中であまり顧みられていないのはスペイン文学ではないだろうか(ラテンアメリカ文学は別にしても)?岩波から出たこの翻訳が最高のものとは言わないまでも、一般の読者にとって手に取りやすいものに仕上がったことは言うまでもない。詳細な注釈が出色の出来である。