日本現代詩の源流
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上下2巻に収められた白秋の詩は、上巻よりも下巻の方に、より一層の煌きを感じます。読み耽っていると、ふと、中原中也や谷川俊太郎、寺山修二などを想い起こさせるのです。と言うより、近現代の日本詩という大河の源流を辿ってゆくと白秋の詩に至る、という感慨に打たれ、ふう、と安息の溜息が思わず胸をついて流れるのです。
特に、「薔薇二曲」の短い言葉に沈み込んでゆくような静かな、それでいて溢れんばかりの詩情、「落葉松」に込められた孤独感と人の愛を求めて止まない、やるせないような詩心は、日本近現代詩の源流を見る思いです。もっと言えば、「万葉」「古今」の時代より連綿と受け継いできた「日本人の心」の近現代という時代的出発点というべきかもしれません。
童謡で有名な白秋ですが、しっかり根の張った「詩心」に裏打ちされているからこそ、子供の心にもすんなり入ってゆくのでしよう。
上巻だけでなく、ぜひ、「下巻」をじっくり味わってみることをお薦めします。
本のカバーもシンプルでとても綺麗でいいですね。