アーティスト2人で選んだベスト盤の最高傑作!
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平川地一丁目がそのライブ活動を終えたのが今年の8月23日。
それから約3ヶ月が経ちました。
今回のアルバムは兄の龍之介さん、弟の直次郎さんが自ら選定した曲で「もうひとつの平川地一丁目」を構成しています。
前半は「声変わり前を中心とした弟直次郎さんの説得力あるヴォーカル」を中心に名曲の数々が並んでいます。
あるレビューで直次郎さんを「ザラついた、野太い声で…」と何の配慮なく不躾に書かれた事を僕は忘れません。変声期は男のデリケートな性徴です。直次郎さんは「気」を要する武術に自らを置くことで体型、喉から腹への呼吸法への転換…等々、そうした事柄をストイックに学び、その声質が現在「ハイトーンを保ちながら、力強く発生出来る声質」に変えたのだと理解しております。
兄の龍之介さんですが、歌詞・作曲力と併せて「編曲力」をもの凄い勢いで身につけた、希有な能力の持ち主と感じております。「音とはどう伝えるべきか?」…これをとりわけ後半の活動で考えてこられた才能と感じています。
このアルバム、聴き方がたくさんありますね。中間の5曲ほどは実は一番伝えたいメッセージでしょう。後半はロックへの転換の中でのベストな曲を選別。
個人的には作詞が兄、作曲が弟である「全ては君のために」。この曲がベスト中のベストと思います。村下さんの「初恋」を全く違う観点から描きあげて…そしてその切迫した気持ちを兄弟ベストの心意気で歌い込む…これこそ名曲!そう感じています。
DVDは恵比寿での8月23日、平川地一丁目としての最後のライブが収録されています。
二度とこうした「欠落した部分を訴えかけるアーティスト」は日本のフォーク界では出てこないでしょう。このアルバムを発売することで彼らは永遠のリスペクトされる側のアーティストになりました。
この時代では最後の瑞々しい表現者たちかもしれません。後世に語り継がれるべきアルバムとして推薦します。