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ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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著者の資質が発揮されている ★★★★★
 故事や古典を下敷きに中世から近世の物語に仕立てた六編の短編だ。
 物語の進行とは別に、客観的な解説や語りが割り込んでくるところが澁澤龍彦らしい。東西の古典を引き合いに出して、物語のネタ見せに近い解説なのだが、その割り込み方も無理がなく、特にしらけたりもしないところがこの作家の特徴と言えるのではないだろうか。
 「高丘親王航海記」のように規模を拡大した作品も楽しいが、モザイクのようにいろいろなエピソードを組み合わせて枝葉がにぎやかになりがちである。それに比べて一つのエピソードから書き起こされた短編には前述のような職人仕事がより簡潔に発揮されている気がする。好きな作家なので偏向しているかもしれないが、「高丘−」よりは著者を知るのにお奨めである。
上質の芸術、上質のエンタメ。 ★★★★☆
古典を翻案した幻想短篇集である。
軽妙で美しい日本語と不思議な物語をただ味わえば良い、上質の芸術にしてエンタメである。
ペダンチックで気楽な語り口には愛嬌がある。

私は澁澤氏の著作は初めて読んだのだが、楽しめた。
「画美人」は八雲の「果心居士」っぽかった。オチは違えど。
澁澤氏の嗜好が自由気儘に描かれた親しみ易い作品 ★★★★☆
澁澤氏が愛好するオブジェや両性具有、黒魔術、その他の思索を、ザックバランな語り口で6つの昔話風の物語中に散りばめた中編集。

タイトル作「ねむり姫」は、定家「明月記」中に出て来る悪党天竺丸と、作者が愛好する貝、螺旋、「箱(柩)中の姫」のイメージを組み合わせて幻想談に纏めたもの。永遠の「ねむり姫」と化した"静"の珠名姫と、波乱万丈の人生を送る"動"の天竺丸との対比の妙と因縁話が狙いだと思う。神秘感漂う姫の柩が舟に運ばれ川を辿るシーンは、黄泉の国への旅立ちを想起させ、幻想感を高めている。姫が流す血は破瓜のような気が...。「狐媚記」は憑狐譚と復讐譚の組み合わせに黒魔術の雰囲気を加えて綴ったもの。狐の体中に生まれ出る「狐玉」と言う霊異の塊が重要な役割を果たしている点が作者らしい。「ぼろんじ」は石川鴻斎「夜窓鬼談」中の「茨城智雄」をベースにした由だが、作者のアンドロギュヌス嗜好が出ているだけで興趣が薄い。「夢ちがえ」は再度「箱の中の姫」がモチーフ。姫が"耳しいて"いるため父に疎まれ牢に幽閉されている点が工夫で、牢の小窓から覗き見る世界が全てと言う設定。そこで垣間見た田楽法師にトキメキを覚える。無音と雅楽の対比、そして作者の得意とする、夢の重層構造と、夢と現実の逆転。小品ながら味わいがある。「画美人」は唐風の物語で、ギヤマン鉢の中の金魚(蘭虫)、絵から抜け出す美女、西洋風魔術師を思わせる神官と、道具立ての割には平板な感じ。「きらら姫」は江戸時代の大工が江ノ島の洞窟をタイムトンネルとして鎌倉時代へ行き、日蓮のために草庵を立てて帰って来るという一種の法螺話。"きらら姫"が作中に登場しない所が可笑しい。

全て明治以前の物語なのに、カタカナ語を含む現代用語や英語を違和感無く使用している辺り、気儘に書いている様子が窺える。澁澤氏に親しむには適した本ではないか。
幻想に包まれた短編集 ★★★★☆
和歌や漢文など全て理解した訳ではありませんが、何故か引き込まれるように読んでしまいました。
この作品そのものが幻想で、読者を妖しく呼び寄せているようです。
(意外と読みやすいと思います。こう感じたのは太宰治氏の作品以来です。)
六つの美しい珠を収めた宝石箱のような作品集 ★★★★★
 平安時代から江戸時代にかけての妖異譚が六つ。「ねむり姫」「狐媚記」「ぼろんじ」「夢ちがえ」「画美人」「きらら姫」。澁澤龍彦の小説のなかでも殊に魅力的な『高丘親王航海記』(1987)や短篇集『うつろ舟』(1986)に先立って1982年〜1983年(昭和58年)にかけて書かれた、これも実に魅力的な作品集。
 「ねむり姫」の、ひたひたと満ちてくる“水”。「狐媚記」の、夜光る“狐玉”。「ぼろんじ」の、小さな“節穴”が遠眼鏡になり変わる不思議。「夢ちがえ」の、他人の“夢”を吸いこんでしまう頭の中の匣(ハコ)。「画美人」の、画中の唐様美人の馥郁たる“芳香”。「きらら姫」の、北斗の七つ星を舟に見立てた“星舟”が夜空を翔る件り。いずれも、妖しいエロスが匂い立つ話の中に、宝石の如く美しいイメージがきらりと輝いていたのが素晴らしかったなあ。
 わけても気に入った作品は、一点で結ばれるふたつの線に妙味を感じた「ぼろんじ」(“虚無僧”の意)と、江戸時代のタイム・トラベルを綴った「きらら姫」。どちらの短篇も、途中から意外な方向に話が逸れて行く・・・、その逸れて行き方が素敵だったのが印象に残りました。