街の変化が「時めき」を感じさせてくれる
★★★☆☆
この写真集には戦後から昭和四十年代くらいにかけての「東京」が切り取られている。懐かしい街並みと、生気に満ち溢れた人々の顔。
「あの頃はよかったなぁ」というノスタルジックな見方もあるだろうけど、一方で街並みが目まぐるしく変わっていくさまを眺めるってことが単純に面白かったりする。子供のころに読んだ「ちいさいおうち」という絵本もそうだった。田舎の丘に建っていた「ちいさいおうち」の周りはいつの間にか高層ビルばかりになってしまう。車やバス、電車が行き交い、街は夜も眠らない。時代遅れの「ちいさいおうち」は家ごと車に載っかって田舎に引っ越していく... 子供心に感じたのは感傷と共にときめきだった。街の急激な変化が「時間」を感じさせる。時間を感じるってことが「時めき」なのかも知れない。昔流行った「シムシティ」の魅力もきっとそれだ。
この写真集はプロの写真家の手によるものではなく作家性、物語性といったものは希薄である。その分、記録写真として、東京のありのままの変化を感じることが出来る。
取り上げられている街は作者の慣れ親しんだ日本橋、銀座界隈が中心だが、より変化の大きい新宿、渋谷、池袋といった新興都市の今昔もこのようにして眺めてみたいと思った。