読んでおいて損はない
★★★★☆
大雑把に分けると序章、各作品(主要6作品の後に初期の習作や未完作も)、まとめとなっている。
それぞれの章の担当者は皆違うため各々文章のクセが結構あり、章によって(自分は)理解度が落ちたり上がったり。
同じ言葉や似たような文章の繰り返しでやや冗長に感じる論文(というべきか解説文?)もある。
わざわざ難解な言葉を使わずとも、もっとシンプルに表現すれば済むのではと、素人ながら感じる箇所も結構あった。
研究者が複数集まる本では避けようのないことなのだろう。経歴で判断する訳ではないが、巻末に付されている彼ら一人ひとりの
所属や研究実績にも注目した方がいいかもしれない。
ただ、「学ぶ人のために」とあるだけあって主に海外の論文の紹介が結構あるので、大学で専門的に研究しようとする人には
かなり役に立つであろう情報がたくさんあるとは言えるかもしれない。
誰それのこの本が良いとかあれも良いとか、○○に興味がある場合はこちらの論文にもあたると良いとか、
この問題についてはまだ研究の余地があるとか(なおこういったアドバイスに出てくる文献は巻末に参考としてリストアップされている)。
人物達の主な階層である上流中産階級の階級意識や職業意識、相続問題や結婚問題という事柄について随所で詳しく触れているのも
オースティン文学が扱っている社会の構造を知る上で非常に役に立つ知識ばかりなので助かる。
ほんの断片ではあるが各主要作品の原文並びにとても詳しい注釈が載っているのが嬉しかった。あまりに詳しいので辞書なしで全然OK。
特にアンへ宛てたウェントワースの手紙が原文で全部収録されていたのは◎。
翻訳という解釈無しでウェントワースの生の声を聴くと、翻訳から受けていた印象とはまた違って、彼のアンへの愛情が
もっと強いものだったのだなと実感。特に無生物主語による表現などはやはり日本語に直すと味気なくなるものだなと感じた。
英語のまま受け取るのが(当たり前だけど)一番良いのだろう。愛好家としては原典に挑戦してみないとダメかな〜と反省。
読んでいて特に理解しやすく、面白いと感じたのは『ノーサンガー・アベイ』『エマ』『説得』について扱った章と、大島一彦氏による最後のまとめ。
この方のオースティン作品におけるユーモアについての説明は平易な言葉で述べられており、本当に解りやすい。
本書では多くの研究者がオースティンのユーモアについて説明しているが、その日本語表現がとっつきにくく、自分にはいま一つ解りにくかった。
大島氏のようにもう少しシンプルに表現して欲しい。もっとも研究論文とは難しげに見えなくてはならない物なのだろうが。
同氏著の中公新書と併せて読むと更に理解が深まって良いと思う―と言うか、中公新書のみでもかなり用は足りるかも…。
ここから始めましょう
★★★★★
まさに書名どおりの内容です。とてもよくまとまっています。ジェイン・オースティンの作品を楽しんだ後、もう少し詳しく学びたい人には参考になる本です。いろいろな研究者がいろいろな角度から意見を述べているし、大学の授業を聞いているようなお得感があります。自分の意見はどの研究者に近いか?を見つけて、巻末にある参考文献をさらに読み進めていくのが良い順番だと思います。
作品をユーモアという点から見つめたり、フェミニズムから見つめたり、政治的な考えから見つめたり、よくまぁこれだけの見方があるものだ・・と驚きました。それを知ってから作品を読み直すと「オースティンの意図はもしかするとこうだったのかも?」と作品に奥行きが出る気がしました。
どの研究も正しいかどうかは分からないわけですから、自分はこの研究者の考え方が好きだ、と思えばそれでよいのだと思います。この本は様々な説をまんべんなく紹介しており、公平な本だと思います。
本書もそうだが、全体に「学ぶ人のために」シリーズの欠点
★☆☆☆☆
本書もそうだが、全体に「学ぶ人のために」シリーズの欠点がある。執筆者の90パーセントが能力の弱い大学人だということ。こんな先生方から「教えてもらって」タメになることは、残念ながら、ほとんどまったく何もないということ。要するに本シリーズ「学ぶ人のために」からは、すばらしいことが「学べる」ことは奇跡的と言っていいくらい、まず何もないってことだ。出版社は大学別の大学入試問題集の赤本で有名な所。奇妙な癒着が出版社と能力の弱い執筆者との間にある。