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アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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アイロニーとくせのある奴ら ★★★☆☆
『ジュリアス・シーザー』でマーク・アントニーは見事にシーザーの汚名を晴らし、暗殺者ブルータス一味を破滅させました。本書はその後の彼を描いています。地中海を中心とするポスト・シーザーの世界は、後に元老院からアウグストゥスの尊号を贈られるオクタヴィアヌス(彼もシーザーです)、レピダス、アントニーとによって第二回三頭政治が樹立されますが、やがてオクタヴィアヌスとアントニーとの力の均衡は崩れ、二人は闘うほかない状況へと入っていきます。

シェイクスピアの古典劇というよりは、ローマ時代から演じられた西洋歌舞伎といった印象をうけるほどに、馴染み深くて演じ甲斐のある作品ではないでしょうか。

脇役が充実しているうえ、主要人物の個性もよく描出されています。とくにトリマキ達の皮肉やお世辞や愚痴が、人間っぽさを上手く表していて、シェイクスピアはこういう部分を書いていて面白かったのではないかと想像してしまいます。

クレオパトラのお姫様ぶりは幼稚性と残虐さがある一方、義理人情もあわせもっていて、さすがプトレマイオス王朝最後の王といった印象です。しかし、あまりに感情に左右されている行動ばかりのためか、尻軽女とアントニーに罵倒されるのも、うなずけます。実物はどうだったかわかりませんが。

研究書などを読んだ上で読まなくても楽しめますが、ローマの歴史を少し知っておくと読みやすいと思います。何度も読むか聞くかすると、味わい深くなるのかもしれません。