独特の雰囲気
★★★★☆
今まで通り装丁も良いですね。丁寧に作られた美しい本です。
第1巻では主人公ソニンの生い立ちと、生まれ育った国での「事件」した。第2巻では南の国で出かけての「事件」でした。この第3巻では北の国へ出かけての「事件」です。
望まない夢で見た光景が彼女を導き、元巫女故に「欲」を持たない事が回りの人間に不思議がられる。成長していく他人と自分を比べて焦るソニン・・・。悩み多き元巫女です・・・。(笑)
今回も魅力的な登場人物が現われました。北の国の「王女イェラ」です。第2巻でも南の国の王子が生き生きと描かれていましたが、今回もクール・ビューティ!!という感じの魅力的な王女様です。
「朱烏の星」という副題が示すように、今回は星空に関するお話があります。表紙の絵を見るとなにやら天文台のような建物がありますね。「朱烏」というのは「アケガラス」と読みます。(笑)それにちなんだ星のお話も出てきます。ただ、いわゆる「事件」とは関係が無く、孤独で聡明な「王女イェラ」の心の琴線に、ソニンが触れるきっかけとなる・・・という風な扱いです。この二人だけが登場する場面は面白いんですよね。ピンとした緊張の糸が張られているのに、不思議な一体感がある・・・。二人の会話をもっと聞きたいと思わせる雰囲気が感じられます。
う〜ん・・・要するに「上手い!!」という事ですね。(笑)
雪虫さんの描くソニンやイェラの心模様は、素朴で純粋で一途で、しかも軽やかな空気を感じます。これはやはり才能かな?他の作家さんと違うものを持っていると思えますね。その辺が再確認できたのも第3巻の大きな収穫ですね。お話自体も中々のものですが、結末に近づくに従って、王女イェラやソニンの人間的な成長が感じられて爽やかに読了できます。