著名なロシア文学者によるドストエフスキー評伝
★★★★★
『謎とき罪と罰』『謎ときカラマーゾフの兄弟』でおなじみの江川氏によるドストエフスキー評伝。この本は江川氏の卓越したロシア語によって、最初の作品『哀れな人びと』や『悪霊』などが例の「謎とき」の手法によって解剖されている。特に著者は、ドストエフスキーの時代、意外にもあまり普及していなかったロシア語聖書を文豪が入手する機会を得たことを重要視している。またゴーゴリやプーシキンからの影響、文豪が多大な関心を示した日本人にはあまり知られることのないロシア正教の異端信仰、分離派と去勢派による社会的現象、事件が『罪と罰』などの主要な作品とその登場人物の造詣に多大な影響を及ぼしていることを解明している。