最近では出色の量子化学の教科書
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同著者による旧版の「量子化学」から29年。73才の著者の最後の労作ではないかと思う。私が推奨する日本語の教科書は、藤永 茂「分子軌道法」、米沢他「三訂 量子化学入門」、ザボ・オストランド「新しい量子化学」であるが、ようやく、密度汎関数法の普及以降の最近の成果を取り入れた、学部学生が読める教科書が出版された。洋書では、Levineの「Quantum Chemistry」など、早くから密度汎関数法の解説に相当のペイジ数を割いていたのに、である。密度汎関数法ではパール・ヤングの本が有名であるが学部学生には難しい。原田氏の「量子化学(上)」は旧版の改訂版であり、新しい成果は「量子化学(下)」に集約されている。Hartree-Fock法に始まる伝統的MO法、溶媒効果や、反応座標、さらに半経験MO法についても新しいバージョンまで記載されている。数式の記述の丁寧には旧版から引き付いている。