誰をも懐かしい気持ちにさせる作品
★★★★☆
この小説の主人公は、コーリー・マッケンソン。
40歳代の男性で、作者自身を思わせるような経歴の持ち主。
彼が、生まれ育ったアラバマ州のゼファーという小さな町で
体験した12歳の1年間を回想していくというのが、
本書「少年時代」の設定です。
冒頭、父と車で出かけた際、
少年時代の彼はサクソン湖に沈む車を目撃します。
その車の運転席には、裸にされ、
顔を潰さてピアノ線で首を絞められたれた死体が、
ハンドルに手錠でつながれていました。
保安官に通報するも、湖の深度が深すぎ、
車は引き上げられないままとなります。
殺されたのは誰で、犯人は一体誰なのか。
この謎が主軸となってストーリーは展開していきますが、
この本の面白さは、小さなエピソードの積み重ねにあります。
小説は4部に分かれ、
第1部が「春」、第2部が「夏」、
第3部が「秋」、第4部が「冬」を描いていきますが、
各部が小さな章に分かれていて、
この章ごとに短編小説であるかのような、
小さな物語が展開していくのです。
この各物語は、主人公と友達の友情を描くものや、
町の個性的な人物との関わりを描くもの、
また、モンスターが登場するようなファンタジー色の強いものなど、
変化に富んでいますが、
いずれもある種の郷愁感を呼ぶような内容となっています。
子供時代への思いというものは
全世界共通のものがあるのではないでしょうか。
国や環境が違っていても、私たちが持っている、
共通の懐かしい気持ちをくすぐるようなものが
各エピソードには詰まっています。
上・下巻合わせて1000ページを越す大作ですが、
次のエピソードを早く知りたくて、
どんどん読み進んでしまう、そんな小説です。
ただ、ミステリとしての色合いは弱めでしょうか。
本書はむしろ、ミステリをアクセントにして
巧くまとめ上げた少年の成長物語という印象を受けました。
正真正銘の傑作!
★★★★★
1960年代の米国南部の田舎町ゼファーを舞台に、空想好きな12歳の少年コーリー・マッケンソンの1年に渡る冒険と成長を描く小説『少年時代』。春と夏が描かれた上巻に続き、下巻では秋と冬、そして後日談として今のゼファーが描かれます。
上巻の冒頭で起きた殺人事件。コーリーは、大切な存在を失うなどの試練を乗り越えて成長しながら、少ない手ががりを元に事件の真相を追います。そして明らかになる意外な犯人。コーリーが犯人と対峙する場面はまさにスリルとサスペンスです。
この作品は、上下巻合わせると約1,000頁の大部な小説ですが、殺人事件の謎を軸に、古き良き時代への郷愁をかきたてるいくつものエピソードが描かれ、読むのが全く苦にならなかったばかりか、読み終わってしまうのが惜しいと思う稀な読書体験ができました。
出会えた幸運に心から感謝すると共に、まだ読んでいない方には自信を持ってお薦めできる正真正銘の傑作です。
郷愁をかきたててやまない作品
★★★★★
上巻を読み終えた時点でのレビューです。
舞台は1964年、黒人差別が色濃く残る、アメリカ南部の田舎町ゼファー。想像力豊かな少年コーリー・マッケンソンの11歳から12歳にかけての1年間が上下巻を通じて描かれます。
物語は、絞殺された男が、ハンドルに手錠でつながれクルマごと湖に沈められるところを、コーリーとその父親が偶然見つけるところから始まります。
この男は何者なのか、誰が何のために殺したのか。この謎が底流として流れつつ、コーリーを巡る日常(非日常?)のエピソードが重ねられます。
親友、町の不良少年、悪党の一味から、川に棲む怪獣、魔術を使うと噂される黒人の老女性指導者、クルマを駆って疾走する幽霊などまで、コーリーは様々な人・モノ・事件に関わることで徐々に成長していきます。
細かいエピソードの積み重ねで物語は進んでいくのですが、私の少年時代は、コーリーのそれとは場所も時代背景も全くかけ離れていたにも関わらず、1冊を通してずっと郷愁をかきたてられていました。
上巻では春と夏とが描かれ、下巻では秋と冬とが描かれます。下巻では、コーリーが大人たちに代わって謎を解こうと奮闘するようです。その経験を通じて、更に彼は成長するのでしょう。これから下巻を読むのが本当に楽しみです。
ジェンダー観が古臭い出来損ないのマジックリアリズム
★★☆☆☆
ホラーというよりファンタジィというか、
マジックリアリズム寄りの児童文学。
1964年のアメリカの田舎町の一年が描かれます。
主人公は12歳の少年だが、登場人物は160名に及ぶ。
大長編というよりは、30Pほどの短編連作な感じ。
名作の誉れ高いが、
私には退屈で退屈で上下巻読むのに20時間かかったぞw
つまんないエピソードの羅列である。
ミステリとしてのメインストーリーが細すぎて、
ワクワク感が無いのが欠点。
この雰囲気が合う人には至高の読書空間になるのだろうが、
知性も教養も未熟な少年や少年時代が素晴しいとは思わない私には
何も残らない駄作でした。
いじめっ子や悪漢と対決しても、
魔法で解決するのは白けたぞ。
ジェンダー観が古臭いのもダメポ。
主人公が不細工な天才化学少女の魅力に気付かずに、
美しい妻を娶ることになるのは古すぎて大笑いw
少年を主人公にした文学的なミステリは、
ジョー・R・ランズデール が世界一だと私は思う。
この作品が好きな人には、
ガブリエル・ガルシア=マルケス の「百年の孤独」 も楽しめるかと思う。
マルケスと比較するとは誉めてるように思われるかもしれないが、
私的にはマキャモンは屑認定しました。
永遠に読み継がれるべき物語
★★★★★
遠い外国のちょっと不思議な物語なんですが、
なぜか、いやに懐かしいような郷愁を覚えます。
間違いなく色のイメージはセピアです。
この作品は冒険、謎、魔法、親子愛、ホラー、
友情、笑い、など様々な要素で構成されてますが、
どれをとっても超一級です!
エンターテイメントの鑑のような物語です!
マキャモンの著作にはよく、面白い神父が登場
しますが、今作もなかなか笑えます。
とにかくすごく面白い!!