第2期クリムゾンのスタジオ最終作となる本作は、キング・クリムゾンの残した多くの作品の中で、最も静謐なアルバムといわれる。かたくなまでにドラマティックな展開にこだわってきた彼らの作品の中では異質なほど、自由で繊細、暖かみにあふれた作品になっている。イアン・ウォーレスとボズ(・バレル)が参加し、相対的にロバート・フリップの影響力が減じた結果ともいわれているが、ほぼ同時期の『アースバウンド』での原始的な凶暴さと比較した際の同じバンドとは思えない異質さは、当時のバンド内の不安定な状態を物語っている。両方のアルバムに収められている「船乗りの話」を聴き比べると、同じテーマながらまったく違う曲のような印象を受ける。
この紙ジャケット盤では、ジャケットは背表紙のないクラシックなフリップ・バック、袋状のインナースリーブも当時を再現した作りになっている。小冊子「BOOK OF SATURDAY」では、過去にリリースされた日本盤レコードを紹介している。(大脇太一)
好きなので
★★★★★
クリムゾン好きなので買いました。よかったら買ってください。
耽美的な美しさ
★★★★★
不気味な弓弾きでスタートする「Formentera Lady」。ヨーロッパ的に抒情的なAメロに対して穏やかにグルーブするBメロは東洋的なワン・コード。弾くのが嫌になりそうなボズのワン・パターン・ベース。いくらベース覚えたてと言ったって、こんなの弾かされちゃたまらんな・・・なんて思っていると間髪いれずに次の曲「Sailor's Tale」に突き進む。今度は一変して高速ベースに転じる。カッコいい。怪しげなムードを発散させるジャズ・ロック。
愛人が情人の妻に手紙を書くという歌詞の「Letters」。「私は貴女のご主人の子を宿しています」安手のソープオペラのようなテーマだが、情念と心象風景を描写するシンフィールドの詩はあくまで厳粛。コリンズの濃密なサックスが最高だ。紛れもなく名曲。
シニカルな「Ladies of the Road」は退廃をまき散らすノイズのような間奏のフリップのギターが凄い。
この世のものとは思えぬ美しさのファイナル・ナンバー「Islands」。フリップとシンフィールド最後の共作。しっとりした情感が滴り落ちるボズの歌はまさに天上の歌ともいうべき犯しがたい美しさ。素はファンキー野郎とは思えない。
聴きどころ多数、静寂と希望VS下賤なる肉体派の暴走!
★★★★★
私は、パープルなら「ストーム・ブリンガー」、ZEPなら「フィジカル・グラフィティ」、ELPなら1枚目、イエスなら「リレイヤー」が好きだ。クリムゾンならば、この「アイランズ」がもっとも好き。
他のアルバムのようなライブの定番曲や有名曲があるわけではないが、このアルバムには、クリムゾンの聖と俗、観念と肉体、理想と現実等といった二極分化が絶妙のコントラストを醸し出している。
しかもどの曲も適度な緊張感があり、神秘的で魔術的な美しさをたたえている。彼等の専売特許である、メロトロンではなく、実際の生楽器を多用し、ボズにクサイくらいシリアスな詩を歌わせているところなどに、プログレ界の戦略的自営業者・ロバート・フリップの用意周到さを感じる。
一般に「スターレス・アンド・バイブルブラック」同様、地味な作品集と思われているが、なかなかどうして聴きどころ満載の名作だと思う。特に先の読めない、奇妙な味の「フォーメンテラ・レディ」とスケールの大きい、感動的な「アイランズ」は名曲。
ほぼ同じメンバーによる、「アースバウンド」は聴いたが、このアルバムを聴いたことがない人は、あえてクリムゾン・ファン「もぐり」と言わせてもらおう。
静かになった。
★★★★★
いや。音が小さくなったんじゃなくて、高音質化によって、静かなトコロの静けさが増したんじゃないかとゆー感想。 もう少ししたら、更なる高音質盤が出るらしいけど(笑)
美しくも、儚い、耳で感じるオーガズム。
★★★★★
タイトル大袈裟だったろうか・・・?
でも、このアルバムが、隠れた名盤扱いなのが、理解できません。
ボズのヴォーカルにケチをつけている人達の気持ちも理解できません。
この甘美な世界観は、イエス、ジェネシス、EL&P、ピンク・フロイドでも味わえない、唯一無二のものだ。
これを聴いちゃ、厭世的な気分を鎮めていた時があった・・・。
あのときの青春を、皆様にも味わせたい・・・。
そんな気持ちでレビューを書かせていただきました。